ゲリラ豪雨が多かったこの夏は、片頭痛持ちにとってつらかった。同じ病を持つ人のお陰で心が救われ
◆あの出会いがなければ 空腹とお金の不安と孤独で、私の精神状態は限界を迎えていた。そんな入院生活で心の支えとなったのが、担当の看護師さんだった。 1日中点滴をしているので、何度も針の差し替えが必要になったが、「針が痛くて」と言うと「はーい」といつも穏やかな笑顔で対応してくれた。今思い返すと恥ずかしく申し訳ない思いで一杯だが、私は当時本当に心の余裕がなくなっていたので、とても憮然とした態度をとってしまっていたと思う。でも、そんな私に対して、その看護師さんはとにかく、いつも笑顔で、穏やかで、優しかった。 「僕もね、高校生の時、ヒオカさんと全く同じ症状で入院したことがあるんだ。ヒオカさんよりもっと数値が悪くて、体が動かなくなったんだ。でも、今こうして元気に働いているから、ヒオカさんも大丈夫だよ」 そう言ってくれたことがあった。その言葉に、どれだけ救われたかわからない。病名もつかず、今自分がどんな状況かもわからない。これからどうなっていくかもわからない。そんな中で、同じ状況を経験したことがある人が近くにいるという事実に、どれだけ励まされたかわからない。あの出会いがなければ、心が折れていたに違いない。 長年酷い腰痛持ちで、何もしないと座っているのもしんどく、痛み止めの注射を打たなければ日常生活が送れないという状況なので、定期的に整形外科にリハビリに通っている。そこでいつもお世話になっているトレーナーさんが同い年で、恋の悩みを相談されてから、よく話すようになった。 私は片頭痛持ちで、現在も頭痛外来で治療中なのだが、トレーナーさんも片頭痛持ちなのだという。たまに姿が見えないな、ということがあると、後日「頭痛で寝込んでいました」と言われるのがお決まりだ。
◆1人じゃないのかも この夏は、いつもにも比べてゲリラ豪雨が多く、片頭痛持ちにとってはつらい季節だった。仕事柄ひとりで家にこもることが多く、毎日のように酷い頭痛に襲われると、生きる気力が奪われていく。これからもこの身体と付き合っていかなければならないのか、と思うと、ずーーーーーーーーんと心が沈んでいくのだ。 どうやら、トレーナーさんも同じような体質らしい。片頭痛が起きると、吐いてしまうという。もう何年もその体質と付き合っていて、ヨガや食事に気を付けるなど様々なことをしているというが、辛い頭痛との付き合いは続いているらしい。 リハビリの度に、「昨日は雨が酷かったですね。頭痛は大丈夫でしたか」「私は昨日朝から寝込んでいました」「僕は一昨日吐いちゃいました。でも、なんとか仕事は続けました」「それはよく耐えましたね。無理しないで」と、お互いの頭痛日記の話をする。 体調不良のときって、いつも心細くなる。私は長年虚弱体質で、片頭痛や過敏性腸症候群、腰痛など、様々な全身症状と闘っている。でも、そのトレーナーさんと出会ってから、1人じゃないのかも、と思えてきた。 患者とトレーナーという関係だけれど、私の中では、片頭痛という共通の敵と戦う戦友のような感覚がある。 どうしようもない苦痛と、これがいつまで続くのかわからない途方もなさ、心細さ。それを共有することで、ひとりだけで全部抱え込まなくていい、と思えてくる。 友達でも恋人でもない、ただすこし、辛いことを共有する。そんな関係に、私の生活は支えられ、救われている。
ヒオカ
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