「英断すぎる」と拍手喝采! スタバの「賛否両論の紙ストロー」廃止が「消費体験を低下させる”意識高い施策”」からの転換点になる理由
例えば、アメリカ大手スーパーマーケットの「ウォルマート」は11月25日、従業員の個性を尊重する「DEI(多様性、公平性、包摂性)」推進の施策を一部撤回する方針を示した。 世界中でマイノリティーに対する機会の平等が求められている中でのこの決定は、波紋を呼んだが、ウォルマート側からしてみれば、こうした決定は不思議なことではないだろう。 というのも、DEIでマイノリティーが優遇されたことによって、マジョリティーである白人男性たちの不満が高まったからである。
当然のことながら、DEIは重要だし、筆者としても決して否定しない。すべての人が安全・安心に暮らせる社会を作っていくべきである。 しかしながら、企業からしてみれば、そのもっとも大きなボリュームゾーンである顧客の満足度を損ねることは、多様性云々の前に企業全体の利益を損ねることにもなりかねないという問題があるのだ。 時代の変化に即した施策は、時代の流れとしても取り入れることは必要にはなってきているものの、消費者からすれば、そのような「大きな」ことを意識するより、もっと自分たちの満足度を優先してほしい気持ちはいつだってある。
いわば、「建前(理想)」と「本音(現実)」がぶつかり、そしてアメリカの場合は、この「本音(現実)」が反動のように大きくなっている現状がある。 ■スタバが得意としてきた「本音と建前の同居」 こうした出来事を鑑みるに、今回のスタバの決断はかなり穏当なところに落ち着いたのではないかと思える。 というのも、「紙ストローやめて、完全プラスチックストローに戻します!」という単純な顧客満足度だけを優先した反動ではなく、バイオマス素材ストローという別の道に進んだからである。ある意味での「中道」というか、顧客の「本音」と企業としての「建前」を同居させるのがうまいな、と思う。
もともとスタバは、こうした「本音と建前を同居させる」ことに優れた企業だった。 そもそも同社の拡大のきっかけは、イタリアのカフェバル文化に心酔した社員ハワード・シュルツが「アメリカでも本物のコーヒー文化を!」という「意識高い」理想を掲げて店舗を始めたことにある。 ただ、そうした「意識高い」ブランディングに忠実でありすぎると、どうしても「顧客の要求」との間にズレが生じてしまう。初期のスタバは、イタリアを再現するためにメニューはイタリア語、店内にはオペラがかかっていたが、これでは注文の仕方もわからないし、大音量のオペラには「うるさい」という苦情が来た。