USスチール、トランプ氏の〝変心〟に望み 買収禁止命令 日本製鉄に〝逆転のシナリオ〟米政府相手に法的措置の準備加速
ジョー・バイデン米大統領が日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収禁止を命じたが、ここから逆転するシナリオはあるのか。日鉄は米政府を相手取った提訴を含む法的措置に向けた準備を加速させている。一方、USスチール側は、買収に批判的なドナルド・トランプ次期米大統領の〝変心〟に望みを託す戦略だ。 【グラフでわかる】中国の対外黒字、実は全面的に米国の対中貿易赤字が支えに バイデン大統領は「米国最大の鉄鋼メーカーの一つを外国企業の支配下に置くことになり、安全保障と重要な供給網にリスクをもたらす」として買収禁止を命じた。 日鉄は買収を巡る米当局の審査プロセスの適正さを巡り、法的な問題点を追及する構え。原則30日以内の買収計画放棄を命じられており、この一時中断を求めることも必要になるとみられる。 USスチールの2024年7~9月期は純利益が前年同期比6割減と不振にあえぐ。同社のデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は昨年9月、米メディアに「私たちには資金がない」と語り、買収が不成立となれば、モンバレー製鉄所をはじめとする古い工場の閉鎖や、ペンシルベニア州にある本社移転の可能性を示唆している。 買収の禁止命令を受けた声明で、ブリット氏は「バイデン大統領の政治的腐敗と戦う」と表明した。安全保障の面からも「北京では中国共産党の指導者たちが街頭で小躍りしている」とやゆした。 声明ではさらに「われわれには米国に最良のディール(取引)を実現するために懸命に働く大統領が必要」とも言及した。バイデン氏を厳しく批判し、わざわざ「ディール」という言葉を使ったことで、トランプ氏の翻意を求めていることは明白だ。 「政治案件」となっている買収計画だが、肝心の日本政府の動きが目立たないのが気がかりだ。