オルタナ総研統合報告書レビュー(33): カネカ
記事のポイント①カネカは中期計画を廃止した②中計に替わる「3年の仕掛」は、約束したことをやりきるための仕掛け③「3年の仕掛」を実践し、全員でポートフォリオ変革を推進中だ
カネカは従来の中期計画を止め、「3年の仕掛」を導入しました。「計画とは今この瞬間を素早く動く事だが中期計画は、前提に拘り過ぎて動けない」と理由を述べています。「3年の仕掛」は約束したことをやりきるための仕掛けを意味します。カネカは今、全員で2025年度のポートフォリオ変革を目指しています。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)
化成品・機能性樹脂・発泡樹脂製品・食品・ライフサイエンス・エレクトロニクス・合成繊維など多岐にわたる事業・製品を展開している化学メーカー、カネカの経営戦略は、ポートフォリオ変革の推進です。多種多様な異種技術、ソリューションを組み合わせ、ユニークで価値のある新たなソリューションを創出し、社会課題の解決に貢献することを目指しています。 ポートフォリオ変革により、営業利益2022年度351億円から2025年度+x年度1000億円を目指し、資本収益性指標であるROEは2022年度5.7から2025年度10.0、ROICを2022年度5.5から2025年度8.5と見込んでいます。 カネカレポート2023/統合報告書の「トップメッセージ」では、菅原公一代表取締役会長が、カネカの経営戦略について18ページにわたり、トップの思いを語っています。 キーワードは、「Purpose「カガクでネガイをカナエル会社」の原点を見つめる」、「ライフサイエンスへの重点シフト」「Diversity 新たな価値の創造と女性」「カーボンニュートラル・DXの取り組み」「人間賛歌の健康経営―Wellness First」などです。 最終章が5ページにわたる「Ⅳ.Discover Future―計画「3年の仕掛」2024で考えたこと―」です。 この章で「中期計画をやめた」と表し、「計画とは、本来、明日どんな変わり方をするか、明日から今を決めて、(明日に向かって)今この瞬間、素早く動くことである。なのに、中期計画という箱では今がフリーズしてしまう。従って中期計画という箱を壊し捨てる。好奇心と夢がいっぱい詰まった「天井がないLimitlessの玉手箱」のことだ。そんな計画「3年の仕掛」に変える」と述べています。 「多くの計画では、将来のことが分からないにもかかわらず、前提としての数字やシナリオを変動させず、将来も不変なものとして戦略遂行してしまう。」 「大切なことは、何が成功なのか、最終的なGoalを構想してそれを逆算していくこと。望む結果を得るための仕掛けを、バックキャスティングし、仮説として書き出す。仮説が現実とズレてたということなら、当初立てた前提の違いを検証すればいい。変更の代替案が検討できる。論点整理は仮説思考である」と中期計画を止めた理由を語っています。 そして「計画「3年の仕掛」は、約束したことをやりきるための仕掛けだ。」と結んでいます。 「トップメッセージ」で示された中期計画を止めると言う経営方針の大きな転換が、組織を形成する従業員一人ひとりに腹落ちし、企業価値の向上に繋がるには、仕掛けと時間が必要と認識します。 今後は従業員意識調査を継続して実施し、浸透度合いを検証されたらいかがでしょうか。