名鉄百貨店も閉店へ 電鉄系「大衆百貨店」の黄昏
名古屋駅に直結する名鉄百貨店本店が2026年春に閉店すると複数のメディアが報じた。12月末時点で正式な発表はされていない。だが親会社である名古屋鉄道(名鉄)のターミナル再開発に伴い、コロナ前から閉店が取り沙汰されており、小売関係者の多くは既定路線と見る。近年は同店に限らず、電鉄系百貨店の事業縮小が相次ぐ。電鉄系が担ってきた“大衆百貨店”が岐路に立っている。 【画像】名鉄百貨店も閉店へ 電鉄系「大衆百貨店」の黄昏
同店は名鉄名古屋駅直結の百貨店として1954年開業。名古屋の百貨店では長らく松坂屋、三越、丸栄(18年に閉店)と並ぶ“4M”の一角を占めた。73年から設置された巨大マスコット「ナナちゃん」も市民に愛されてきた。
転機は2000年、隣り合うJR名古屋駅の再開発によってジェイアール名古屋タカシマヤ(JR名古屋高島屋)が開業したことだ。JR名古屋高島屋は広域から集客できるJR直結の強みと若い世代の取り込みによって、エリアの最大の百貨店へと成長した。23年度の売上高は名鉄百貨店本店が352億円であるのに対し、JR名古屋高島屋が1891億円(タカシマヤゲートタワーモール含む)と5倍以上の差をつけられてしまった。
名古屋鉄道は同店周辺のビルを取り壊して、商業施設、オフィス、ホテルなどが入る高層ビルを3棟建てる。駅のプラットフォームの移設も含むため、最終的な工事終了は40年になる。この後継の商業施設は、百貨店以外のものになる見通しだ。
東急、小田急、京王、東武も
電鉄系百貨店の事業縮小は名古屋に限った話ではない。
東京・渋谷駅の東急百貨店は、駅直結の東急東横店を20年に閉めた。親会社・東急の再開発に伴うものだ。跡地には東急が主体で運営し、商業やオフィスが入る渋谷スクランブルスクエアの2期棟(中央棟、西棟)が27年の完成を目指して建設中だ。東急百貨店は渋谷駅から徒歩圏にあった東急本店も23年に閉店している。こちらの跡地には東急、東急百貨店、LVMHグループのLキャタルトンによる複合ビルが建設中だ。低層部は商業施設の予定だが、東急百貨店になるかは不透明だ。