〈立食そば屋大量閉店〉“日本一の立食そば屋”が憂慮する実情「不誠実だと思っている」「値上げに納得してほしくない…申し訳なくて」維持するには “家族経営でしか無理”と苦悩を告白
飲食店の値上げが相次いだ2024年。「早い・安い・うまい」の代名詞である立ち食いそばから、ついに「安い」が消えてしまう日が来るかもしれない。日本一の立ち食いそば屋・一由そばの代表取締役・山本社長に話を聞いた。 【画像】閉店してしまった都内の立ち食いそば屋
「不誠実じゃないですか」値上げに関して本心を告白
まずはこの一年、食材と光熱費の高騰などを受けて、飲食店は過去最多のペースで倒産していったと報じられているが、年始と夏季休暇を除いて24時間営業している一由そばではどんな困難があったのだろうか。 「この一年というか、コロナ禍以降は人とお金の流れが大きく変わってしまいました。例えば物価で言いますと、材料の仕入れ値ですね。今まではだいたい、材料の仕入れの価格が少しずつ上がっていって3年を目処に、順次値上げをしていきました。 ウチが吸収できる限界を超えたときに値上げをお客様にお願いするっていうかたちで、一度値上げをすれば、3年はもっていたんですが、ここ数年は1年どころか、下手したら1年ももたないくらいで……。値上げのペースがあがっているんです」(山本社長、以下同) 実際、一由そばは今年9月と12月に2度の値上げをしている。どちらも計画的なことではなく、突発的に経営が厳しくなり、限界を迎えての値上げだった。9月に値上げした時点では、12月にも値上げをすることなど一切考えていなかったのだが、わずか3か月にして、状況が変わってしまったのだ。 現在、そば(並盛)の値段は12月に値上げしたことで310円になったが、ここに来るまで、あと6、7年はかかると思っていたという。 「都度都度、許容できる範囲を決めていて、そこを越えそうになったときに値上げをお願いしているという感じです。だって普通に考えたら、毎年値上げをして、今年は9月にも12月にも立て続けに値上げするなんて不誠実じゃないですか。だったら1回で値上げをしちゃえばいいと自分でも思うんです」 熟練の経営者でも予測ができないほど、コロナ禍以降は経済情勢が混とんとしている。衝撃的だったのは、原材料の高騰どころではなく、そもそも品物が届かないということだった。