厚生年金保険料が「国民年金」の補てんに!? 会社員が「損」をして、自営業者が「得」することになるの? 改正案について解説
厚生年金の積立金などを基礎年金に投入して基礎年金を底上げするという年金制度改正案が報道されています。 このニュースを見聞きして、「厚生年金保険料が国民年金のみに加入してきた人にも使われるのは不公平だ」「会社員には損ではないか」などと受け止めた人は多いかもしれません。本記事では、この改正案について解説します。 ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい?
改正の必要性と意義
今回の改正案の名称は「基礎年金のマクロ経済スライドによる給付調整の早期終了(調整期間の一致)」です。まず用語の意味を確認していきましょう。 「基礎年金」は国民年金により受け取る年金の総称です。会社員だった人などは、基礎年金に加えて厚生年金も受け取れます。 「マクロ経済スライド」とは、少子高齢化が進む中でも年金制度の持続可能性を確保するために、賃金や物価が上昇しても年金額の伸びを一定程度抑える(調整する)仕組みのことです。年金財政が改善し、長期均衡が見込まれるようになると調整が終了することになっており、現行の制度では厚生年金は2026年度に、基礎年金は2057年度に調整終了の見込みです。 「給付調整の早期終了」とは、基礎年金の調整終了時期を現行制度の2057年度よりも早めることを意味します。 「調整期間の一致」とは、厚生年金の調整終了時期(現行制度では2026年度)と基礎年金の調整終了時期(現行制度では2057年度)を一致させることを意味します。マクロ経済スライドの導入当初、基礎年金も厚生年金も2023年度の調整終了を見込んでいましたが、さまざまな事情や環境変化によって、特に基礎年金の調整終了が大幅に遅れています。 ■改正の必要性 現行制度では、マクロ経済スライドによる厚生年金の調整(賃金や物価の上昇に応じた年金額の伸びの抑制)はあと2年で終了する一方、基礎年金の調整はあと30年以上続き、その間、基礎年金の「年金額の水準」は下がり続ける見通しです(「年金額の水準」とは、年金額が現役世代男性の平均手取り収入の何%に当たるかを意味し、「所得代替率」といいます。金額そのものの増減ではありません)。 ■改正の意義 厚生労働省は今回の改正案の意義として、基礎年金の調整を早期に終わらせ、かつ、基礎年金と厚生年金の調整終了時期を一致させ、本来の「賃金や物価に連動した年金額」を実現することと、将来の基礎年金の給付水準を向上させることなどを挙げています。