フランス人が“夜泣き”で悩まないのはなぜ? 日本とフランスの「子育て」の決定的な違い
「出産直後から始まる夜中の授乳で親は細切れ睡眠に。大きくなってからも寝かしつけに時間がかかる」でもこれは誰もが通る道だし……と思っていませんか? 【実例付きで解説】「子どもがなかなか寝ない」原因は“照明”にある!? 一級建築士ママが実践する教える、“早寝”をするコツ 「子どもが自分のことを自分でできるようになる」「親も子どもも余裕が生まれ、自立する」「親も人生に自信が持てる」などたくさんのメリットがある“フランス式育児”。その中でも、産後の親にとっての大きなメリットが「睡眠」に関することです。 赤ちゃんを大事にしながらも、それと同じくらい「自分(親)の時間、ゆとりある暮らしができるか」を大切にしているフランス人の育児法を『フランス人の赤ちゃんは朝までひとりでぐっすり眠る』からご紹介します。
フランス語に「夜泣き」はない
「夜泣きがひどくて夜眠れない」日本では産後の家庭でとてもよく聞く悩みです。逆に「夜泣きに悩んでいない。親もよく眠れている」というような方は珍しいくらいではないでしょうか。 「夜泣き」とは、これといった理由なく夜中に急に泣き出すことが何日も続くことです。ある調査によると(※)、夜泣きを経験した人の多くは、平均6カ月から13カ月くらいまでの約半年間続いたようです。その調査では、夜泣きを経験した親のうち6割近くが、睡眠不足で辛いと感じています。 日中は子育てや仕事でヘトヘトになるのに、夜ゆっくり眠って回復することができないのであれば、いくら赤ちゃんがかわいくても辛い日々となってしまいますよね。 (※株式会社エムティーアイが2015年に実施) 「ひと晩中、ひんぱんに抱っこしてあやしていた」 「夜中に抱っこしながら外を散歩して寝かしつけた」 「全然寝てくれなくて、毎晩寝不足」 「すぐ起きるから授乳が1時間おき」 そのように悩む親も決して少なくなく、最近ではその受け皿として国内の病院に「夜泣き外来」などの専門外来も誕生しているくらいです。 ところで、日本では乳幼児の深刻な悩みの原因のひとつとなっている夜泣きですが、フランス語には日本語の「夜泣き」にあたる言葉がありません。 “Pleurer la nuit”(プルレ ラ ヌイ)という「夜に泣く」ことを意味する言葉はありますが、言葉の持つニュアンスは日本語の「夜泣き」とは少し異なります。 一つひとつの単語を見ていくと、“Pleurer”(泣く) “la” (英語のtheに相当する冠詞)“nuit”(夜中)となり、文字通り「夜中に泣く」ことを意味しますが、日本で使われる「夜泣き」のように、困ったものとして問題視されて使われることはほとんどありません。 ニュアンスの違いは、夜中に泣くことが「短期的で問題とならない」か「ずっと続く長期的なもので、問題となっている」かどうかの違いかと思われます。 日本語の「夜泣き」が原因不明で、数カ月にわたって(長いと1年以上)悩まされる、困ったものであるのに対して、フランス語の“Pleurer la nuit”は、成長の過程で起こる、わかっている原因によって、一時的に夜に泣いている事実としてのニュアンスで使われているようです。 “Pleurer la nuit” で一番多いのは、メンタルリープです。メンタルリープとは、「ぐずり期」のことで、生後20カ月の間に、10回のぐずり期がやってきます(※参照:「Thewonder Weeks」)。 それ以外には、たとえば、寝返りを打つようになり、寝ている間にあまり楽ではない姿勢になってしまったとか、ベッドの柵にぶつかってしまったなどでしょうか。あるいは、生後6カ月以降で歯の生え始めで歯茎がムズムズしているせいもあるかもしれません。 「この時期だからこういう原因で泣いている」と一時的なものとしてとらえ、泣く理由も見当がつくため、親にとって深刻な悩みにはなりにくいのです。 つまり、フランスでは夜泣きで悩まされることが少ないため、日本語の「夜泣き」にあたる言葉が必要ないのだと思います。 それでは、なぜフランスの親は夜泣きに悩まされず、日本の多くの親は悩まされているのでしょうか? 同じ人間の赤ちゃんなので、生まれたときは、どちらもまとまった睡眠を上手にとることはできないはずです。しかし、生後4カ月くらいまでの間に、フランスの赤ちゃんの多くは朝まで長時間眠れるようになります。 フランスでは、生後6カ月で長時間眠り続けられない子どもは、専門家に相談し眠るためのトレーニングをしたほうがいいと考えられています。 それに対して、日本では産後から多くのママたちは赤ちゃんの小刻みな睡眠に悩まされ、その悩みが長期間に及ぶこともあります。そして、「それはよくあることで大変だけど耐えるしかない仕方のないこと」のように考えられているのではないでしょうか。 フランス式育児の視点で見ると、赤ちゃんが夜にしっかりと寝てくれるかどうかの違いは、生まれたあとからの赤ちゃんとの関わり方にあると考えます。 次回は、日本で子育てし始めた当初、フランス人の夫が驚愕した「日本での子育ての当たり前」についてお話しします。