2013年生まれの“小学生レスラー”がデビュー「昔だったら考えられないこと」ジャガー横田も期待する新人・NENEが見せた“真っ向勝負”
NENEの決意「諦めないレスラーになりたいです」
「痛かったでしょプロレス。でもこれで今日からプロだから。また一緒に闘おうね」 そう言って「私の体重の半分以下」の新人を労った尾﨑。 「自分が大きいので、セントーンにしてもエルボードロップにしても凄く痛かったと思います。でもプロに年齢は関係ないので。打撃もしっかり入れました、可哀想だけど(笑)。 それでも負けずに、気持ちが折れずに向かってきてくれたので。凄くいいデビュー戦になったと思います。これから体が大きくなったら、どんどん上に行くでしょうね」 チャンピオンが小学生を相手に「打撃をしっかり入れて」もいいものなのか。プロレスは小学生にもできてしまうものなのか。そう思う人もいるだろうが、まさにそこがプロレス独自の面白さでもある。 尾﨑は手加減せずに技を繰り出した。けれどそれは一方的に叩き潰すようなものではなかった。相手の“受け”の技量を超える危険な技、複雑な技は使わない。あくまでシンプルに“どれだけ受けられるのか”を試し、反撃を受け止めながら気持ちを引き出していく。だからデビュー戦の新人とチャンピオンの公式戦が成り立つ。 “闘い”と“信頼関係”が同時に成立するのがプロレスという特異なジャンルなのだ。NENEは11歳で、小学5年生でその世界に踏み込んだ。これからどんなレスラーになりたいかと聞かれて、NENEはこう答えている。 「どんなことがあっても諦めないレスラーになりたいです」
レジェンド・ジャガー横田「昔だったら考えられないこと」
デビュー戦で着たコスチュームは、美蘭のおさがりをリメイクしたものだという。中3の美蘭は現在、受験に集中するためプロレスは休業中。NENEには美蘭の分まで頑張りたいという思いもあるようだ。 歴史、技術、プロレスにどう取り組むかというイズムが受け継がれているディアナ。その最も新しい部分に“小学生レスラー”NENEがいる。ディアナは保守本流の団体で、なおかつ新しさにも柔軟に向き合っているわけだ。 「簡単に言うと時代だなと」 そう語ったのはジャガーだ。 「昔だったら考えられないことです。昔は中学を卒業して入門していた。今は学業の合間に練習してますから。でも、そういう選手が女子プロレスの未来を担ってくれる。選手が増えるのもいいこと。1人デビューしたら、それだけ若い選手たちのライバルが増えることにもなります。それで団体も充実してきてますから。微笑ましく見ております」 他のスポーツと同じで始めるなら早い方が間違いなくいい、とも。これからNENEは試合を重ね、初勝利やタイトルマッチを経験し、いずれベルトを巻くのだろう。きっと挫折もあるはずだ。 そうして10年経っても21歳。今はレスラーとしての“基礎”だけがある状態で、だからこそどんな選手に成長してもおかしくない。昭和世代のプロレス好きとしては、その未来をできるだけ長く見届けたいと思う。
(「濃度・オブ・ザ・リング」橋本宗洋 = 文)
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