自ら命を絶った26歳医師 背景に過酷な労働…直前1カ月の時間外労働は約200時間 労基署が労災認定してもなお病院は…「過重な労働を課していた認識はない」
生前、心配する母・淳子さんに、こうも訴えていました。 【高島晨伍さんの母・淳子さん】「『休めんねやったら、いくらでも休めるわ。休まれへんから行っている。休めないんや』って言いました」 なぜそこまで働かなければいけなかったのか。 晨伍さんは「専攻医」という立場でした。 専攻医は2年間の初期研修を終え、上司などの指導を受けながら診療します。3年から5年かけて研修を続け、試験に合格すれば、ようやく独り立ちした「専門医」として認められるのです。
甲南医療センターにおける専攻医の立場について、晨伍さんと同じ時期に在籍していた元専攻医は…。 【晨伍さんと同時期に在籍元専攻医】「初期研修医の先生たちは、自分で診療っていうことができない。専攻医になった途端に、自分が主治医を担当して、裁量権が与えられて、自分で診療しなければならないので、病院の主戦力の一番立場の弱い若手」 最も大きい負担がかかるのは当直勤務です。 【晨伍さんと同時期に在籍元専攻医】「当直の時は徹夜です。『断らない救急』を前面に押し出していましたし。ものすごい数の救急車が来ますし、一晩で入院させる患者が7~8人になる。(担当する)入院患者さんを20人~30人持っているので、患者さんの治療法を考え直したりとか、土日は入院患者さんのための勤務日になっていた」
こうした状況を変えようと、晨伍さんが亡くなる1年ほど前には、待遇改善を望む専攻医たちと病院側が協議。 そのときの音声が残されていました。 【専攻医の発言】「4月の専攻医の平均残業時間は100時間を超えていたと考えています。検査漏れも多くなってきているので、このままでは患者さんの命に関わると考えられますので、業務緩和をよろしくお願いいたします」 【病院幹部の発言】「言いたいことは、僕らも昔の世代の人間やから、先生(専攻医)と意識が違うんやけど、主治医してると(週末でも)『きょうあの人どうしてるかな?』と見に行きたいとき、あるじゃないですか。主治医として心配、あるいは興味として、自分の入れた薬で、それこそカリウムが上がっているか、下がっているか見たいやん? 半分は勉強や、自分を鍛えるための」 時代にそぐわない精神論を振りかざす病院側…長時間労働の改善は実現しませんでした。
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