コロナ最前線で治療に当たった感染症専門医・岡 秀昭教授、SNS誹謗中傷との死闘の400日
昨年5月に新型コロナが5類に移行し、もう街中はアフターコロナのムードだが、まだ終わっていない闘いがある。 【写真】「謝罪があれば請求額の減額も検討している」と話す岡教授 それは、日本中が未知の感染症に混乱する中、緊迫するコロナ病床で現場を指揮し、正しい情報を世間に懸命に伝えようとSNSで発信し続けた岡 秀昭医師と、そんな彼にいわれのない誹謗中傷を送り続けた匿名アカウントたちの裁判。その死闘の400日について直撃した。 ■「家族への脅迫は見過ごせない」 昨年5月に新型コロナが感染症法上の5類に移行してからもうすぐ1年2ヵ月。約4年に及んだコロナ禍が終わり、日常を取り戻したかに見える日本で、今なお"コロナの亡霊"との死闘を続けている、ひとりの感染症専門医がいる。 埼玉県川越市にある埼玉医科大学総合医療センターの総合診療内科・感染症科で、コロナ禍の当初から治療の陣頭指揮を執り続け、メディアやSNSを通じて正しいコロナ関連情報の発信にも取り組んできた岡 秀昭教授だ。 2019年末に中国の武漢で初めて確認され、瞬く間に世界規模のパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスを巡っては、当初から、この未知の感染症の認識や、大規模な感染対策の是非、ワクチン接種などで意見が対立し、社会が大きく分断。 その間、感染症対策の必要性やワクチン接種の有効性、安全性を訴える医師・研究者などに対し、SNSなど主にネット上での悪質な誹謗中傷や、一部専門家に対する殺人予告など、脅迫まがいの行為が繰り返されてきた。 岡教授はこうした書き込みに泣き寝入りせず、法的手段で徹底抗戦を貫き、これまでに60件を超える匿名アカウントの開示請求を行なってきた。 「ネット上の悪質な誹謗中傷に対して法的手段へと踏み切ったのは5類移行の前後、2023年の春頃でした。 当時、国内の感染状況が落ち着いてきていて、重症化して入院する患者数も大きく減っていたので、約2年ぶりに休暇を取って家族で旅行に行ったのですが、そのときの家族写真が誹謗中傷や脅迫まがいの言葉とともにSNS上で拡散されたのです。 これがきっかけとなって、私に対する攻撃が一気に激化。ネット上だけでなく、職場の病院への迷惑電話や、事実無根な虚偽情報の拡散が止まらなくなり、最近では殺害予告を受けたり、住所までもネット上に拡散されました。 日々、大量の悪意にさらされるストレスで、持病(指定難病のベーチェット病)も悪化しました。心が折れそうになり、これ以上、医師としての仕事を続けられないかもと思う日もありました。