コロナ最前線で治療に当たった感染症専門医・岡 秀昭教授、SNS誹謗中傷との死闘の400日
もちろん、それ以前にも、コロナ病棟の取材で僕がテレビなどに出たり、多くの方に正しいコロナ情報を伝えたいという思いでYahoo!ニュースの専門家解説コメントなども引き受けていたため、コロナの感染対策に反対する人たちや、いわゆる反ワクチンの人たちから非常に多くの悪質な誹謗中傷を受けていました。 ただ、自分だけでなく家族にも危険が及ぶとなると、さすがに放置できません。 そこで、警察に通報して身辺の警護を依頼するとともに、こうした問題に詳しい弁護士にも相談して、悪質な書き込みをするアカウントへの法的手段に踏み切ったのです」 ■TwitterからXになった弊害 しかし、簡単に「法的手段を講じる」といっても、SNSなどネット上の誹謗中傷や脅迫はほとんどが匿名のアカウントによるもの。訴えようにも、まずはアカウント情報の開示をさせて本人を特定しなければならない。また、その過程で問題の書き込みやログが消去されてしまえば、具体的な被害の証拠が消えてしまう可能性がある。 「悪質な書き込みに関してはまず、プロバイダやサイトの管理者に対して、直接削除要請やアカウント情報の開示を要求しますが、応じてくれるケースはほとんどありません。 ちなみに、こうした投稿は特にXに多いのですが、買収されてTwitterからXになって以来、問題のある投稿のチェックを行なう部門の人員を大幅に削減したといわれていて、苦情への反応も非常に緩慢なんです。 また、殺害予告や、なんらかの危害を与える可能性をにおわせた脅迫的な投稿があった場合、警察に報告すると周辺の見回りなんかはしてくれますが、いきなり刑法犯の脅迫罪として捜査するといったところまでには至りません」 では、どうするのか? 「そこで、民法上の名誉毀損や刑法上の名誉毀損罪、侮辱罪、信用毀損罪、脅迫罪などに相当する、悪質な投稿が行なわれたサイトやプロバイダ管理者に対する『発信者情報開示命令』を裁判所に請求して、匿名アカウントの本人を特定する作業が、法的手続きの最初のステップになります。 ただし、表現の自由やプライバシー保護の問題もありますから、裁判所も簡単に『発信者情報開示命令』を出してくれるわけではありません。 こちら側で悪質な投稿のURLが入ったスクリーンショットを保存するなど、具体的な証拠をしっかり集め、誹謗中傷や脅迫が自分に対して向けられたものであることを客観的に証明した上で、裁判所が明らかな権利侵害を認定して初めて『発信者情報開示命令』が出ます。