コロナ最前線で治療に当たった感染症専門医・岡 秀昭教授、SNS誹謗中傷との死闘の400日
そこで、医師としての本来の仕事の傍ら、弁護士やSNS上で協力してくれる方々の助けも借りながら、地道な証拠集めをコツコツと積み重ね、約60件の『発信者情報開示命令』を裁判所に請求しました。そして、そのほぼすべてで開示命令を勝ち取り、匿名アカウントの中の人たちを特定することに成功。 ちなみに、そんな発信者情報開示が認められた人たちの中で、私の措置に対し『言論弾圧のスラップ訴訟だ!』と主張する人たちがいるのですが、開示が認められたのは、裁判所が私に対する明確な権利侵害を認定したからです。 また、2022年10月1日に施行された『改正プロバイダ責任制限法』によって、裁判所は悪質アカウントの発信者情報開示だけでなく、サイト管理者に対する『プロバイダへのログ提供命令』や、サイト管理者・プロバイダに『発信者情報の消去禁止』も併せて命じることができるようになったので、悪質な投稿に関する証拠保全が以前よりやりやすくなっています」 ■繰り返したら賠償金200万円 そうして悪質な匿名アカウントの正体が確認できたら、次はどうするのか。 「その相手に対して、①投稿の削除、②正式な謝罪、③二度と繰り返さないという誓約、④賠償金の支払いの4つを求める内容証明付きの書面を送付します。 それに対する相手方の反応はさまざまですが、匿名性を盾に、壁に落書きをするような気持ちで誹謗中傷していた人なんかだと、特定された段階で態度を変え、素直に謝罪や賠償金の支払いに応じたり、話し合いの結果、示談となるケースも少なくありません。 相手が弁護士をつける場合もありますが、たいてい減額交渉してきます。裁判所が客観的に判断しているので、弁護士はもう勝てないってわかっているんです。 ちなみにその際、再び誹謗中傷を繰り返した場合には『賠償金を200万円に増額する』という条項を盛り込んで、再発を防いだりもします。 一方、要求が届いたことで、逆に誹謗中傷を激しくしたり、アカウント名を次々と変えてまでも悪質な書き込みと挑発を続けたりする人たちもいるので、その場合はまず、民事の『損害賠償請求訴訟』、そして提訴。現在、損害賠償請求訴訟が数件進行中です。 さらに悪質で執拗な書き込みを続ける相手には、刑法上の名誉毀損罪、侮辱罪、信用毀損および業務妨害罪、脅迫罪などの刑法犯として警察に告訴しています。そのうちすでに1件が先日、書類送検されて検察の起訴待ちという状況。自分としては、しっかり犯罪として裁かれてほしいと思っています」