温かい機能性ウエアの元祖、「ミズノ」の「ブレスサーモ」が30周年でさらに進化した!
いまでこそ機能でベースレイヤー、ファーストレイヤーを選ぶ大切さはよく知られているが、30年前は綿の下着が一般的だった。汗を吸い、速く乾かす夏の機能性ウエアさえまだ世間に広まっていなかった1990年代、いちはやく「Mizuno(ミズノ)」は「発熱」の機能を持たせた冬の機能性ウエア「Breath Thermo(ブレスサーモ)」を発売し、改良を重ねてきた。30周年を迎えたいま、どこまで進化を遂げたか。ミズノ株式会社を訪ねてライフ&ヘルス事業部の井之口正憲さんに話を聞いた。
発熱・保温・汗冷え防止・蒸れ防止に加えて、消臭機能が強化された
あらゆるスポーツのウエアやギアの研究開発を行う「ミズノ」は、トップアスリートの活躍をサポートする優れた製品を生み出しては、その技術を応用して快適な暮らしの役に立つアイテムを世の中に送り出している。30周年の「ブレスサーモ」もそのひとつ。 「スキーウエアの開発において重要な、温かさの追求から『ブレスサーモ』が生まれました。当初はスキーウエアの中綿だったんです。湿気を吸って熱を発する『高吸放湿素材』を1992年に発見し、翌1993年に弊社独自の『吸湿発熱理論』として特許申請しました。30年も前のことなので、当時の様子は社内で伝え聞くレベルですが」 井之口さんは「ブレスサーモ」の始まりをこう語る。服のボリュームを抑えながら温かさを維持できる理想的な素材として、1994年のリレハンメルオリンピック日本代表チームのスキーウエアに初めて「ブレスサーモ」が採用され、その最新テクノロジーは選手たちから高く評価されたという。 「発熱する繊維というと、このあとお話しする天然素材のウールや、化学繊維でも一部のアクリルが存在はしていたんですが、発熱効率が低いこともあってポピュラーではありませんでした。機能が明確な発熱素材として登場した『ブレスサーモ』の温かさは、非常に大きなインパクトがあったと聞いています」
モノづくりの試行錯誤を繰り返し、「温かいアンダーウエア」として販売開始
トップアスリートも認める「ブレスサーモ」の温かさ、快適さ。これを一般の方に感じてもらうにはアンダーウエアが一番ふさわしい。そこで当初、厳しい環境で活動するアウトドア用のアンダーウエアとして「ブレスサーモ」を応用する技術開発が始まった。 「スキーウエアの中綿として実用化された『ブレスサーモ』をアンダーウエアに応用するにはテクニカルなハードルがありました。綿の状態から、糸にすることです。簡単に思えるかもしれませんが、紡績に高い技術が必要なんです。化学繊維の『ブレスサーモ』をポリエステルやアクリルと混紡して糸にすることに成功したら、それを編立して生地にするハードルをクリアしなければ、アンダーウエアとして製品化できません」 一朝一夕にというわけにはいかなかった。編み上げた生地を染色ことにも試行錯誤を繰り返し、冬場のアウトドア用アンダーウエアとして「ブレスサーモ」の販売を開始できたのは1997年。スキーウエアとして登場したときとは違ったかたちで大きな反響があった。 「当時まだ市場に『温かいインナー』というものが存在していませんでした。綿の肌着が主流だった1990年代に化学繊維を使いつつ、温かさという機能を持たせた『ブレスサーモ』は画期的でした。技術的にもマーケット的にも大きなインパクトがあったんです。現在ほどベースレイヤー、ファーストレイヤーという言葉が浸透していなかったので『アウトドア用の肌着』として発売しました。機能性ウエアのパイオニアです」