“豊作の年” 注目の3台の新型がデビュー 2015年クルマ業界展望
苦悩する「プリウス」
ロードスターは軽量化という極めてコンサバティブな選択肢を異常な執念で掘り進み、驚異的な軽量化を達成した。これはつまり保守の自己革新である。 NSXは徹底的に革新を目指した。かつてのNSXの存在に縛られているものは少ない。事実上のブランニューで好きなことをやっているわけだ。これだけの先端技術をありったけ突っ込めばきっと問題は山積するだろうが、それでも新しいことをやり続けるパイオニアスピリットの発露である。 もともとスポーツカーであり、ユーザーを選ぶこの2台に関しては、手法的に保守であっても革新であっても、やり切るというスタンスさえあればいい、しかしより多くの普通の人に向けて売るプリウスはそうは行かない プリウスは、飽和するまで市場を席巻した商品の方針切り替えをどう行うかという勝者の悩みをどう解決するかで苦しんでいる。 プリウスはこの3世代、素晴らしい成功を収めて来た。4代目はそれを引き継ぐ成功を義務付けられている。しかしこれが途方もなく厳しい。
まずは現状だ。表はプリウスの2014年月別販売数と昨対比だ。消費税増税があった4月の47%は別としても、数字の出ている11月までほぼ60%台前半で推移しており、年間トータルでも73%という厳しい数字になっている。前年対比で実に27%のダウンである。プリウスは今、これまでほど売れていない。 販売現場の声を聞いても「アクアは売れてるんですが……」と歯切れが悪い。中古車にしても以前なら入荷するとすぐ売れてしまったプリウスが動かない。在庫を並べて「ハイブリッド・フェア」が打てるほどタマがある。 理由ははっきりしている。売れ過ぎたのだ。あっちを向いてもこっちを向いても路上を走っているのがプリウスばかりでは購入意欲に影が射して当然だ。マーケットは「もうプリウスはお腹いっぱい」になっている。商品にとってこういう世間に蔓延する雰囲気の力は大きい。 さらにライバルの台頭だ。昨年はフィット・ハイブリッドに燃費トップの座を奪われ、しかも戦略的価格で販売攻勢をかけられて、プリウスとアクアでずっと分け合って来た普通車車種別販売台数第1位の座を奪われた。 フィット・ハイブリッドが突き付けた36.4km/Lに対して、追われるプリウスは32.6km/L、アクアは35.4km/Lだった。トヨタは意地を掛けてアクアのマイナーチェンジで反撃し37.0km/Lを叩きだして首位を奪い返した。しかし軽自動車のアルトが37.0km/Lでこれに並んできたのである。 軽自動車やBセグメントに対して、Cセグメントでボディサイズの大きいプリウスは、重量面でどうしても不利を免れない。しかしながらトヨタにとってプリウスは世界一の低燃費車でなくてはならない。すでに業界内にはプリウスなら40km/Lを実現するのではないかという期待が満ちている。