“豊作の年” 注目の3台の新型がデビュー 2015年クルマ業界展望
もう一つは宿願であるバッテリーの改善だ。エンジニアはエネルギー密度と呼ぶが、重量当たりのエネルギーにおいてバッテリーはガソリンに全く敵わない。同エネルギー量のガソリンとバッテリーの重量は約30倍と言われている。もっともエンジンはガソリンのエネルギーのたった30%くらいしか動力に変換できない。バッテリーの動力変換効率は80%程度なのでまあざっくり10倍程度の差になる。この差をなんとかすれば軽量化できるというのは誰が考えてもわかる。 そもそもバッテリーは能力を振り絞ると減りが加速度的に速くなる。逆に必要とするより大きな容量のバッテリーからちびちび使うと長持ちする。だからバッテリーの寿命を長くするために「空っぽ→満タン→空っぽ」という使い方をしてはいけない。大容量バッテリーの真ん中あたりで、少し減っては充電し、満充電にしないところで充電を止めるというやり方で使う必要があるのだ。 据え置きで使うものなら大きく重くても良いが、運動体に重たいバッテリーを過剰に積むのは燃費にもブレーキにも旋回にも良いことが無い。しかも重いバッテリーを積むにはシャシーの強化が必要でこちらも悪いスパイラルになる。すでにプリウスPHVには、従来のニッケル水素バッテリーに換えてリチウムイオンが使われている。もしリチウムイオンが使えればエネルギー密度は一気に倍になる。すでにプリウスPHVには使われているので、できない話ではない。 ただし、リチウムイオンは高い。価格的に成立するかどうかが問題だ。またその他に、トヨタは技術的に問題ないと言っているが、基本的特性としてリチウムイオン電池はそのエネルギー密度と引き換えに発熱量が多い。発熱が発火をもたらすリスクは少なくともニッケル水素とはレベルが違うものだ。 プリウスPHVの様な販売台数の少ないクルマではなく通常版のプリウスに搭載するとなれば、月間2万台くらいは平気で売れることになるので、それに搭載するだけの自信がトヨタにあるのかどうかということになる。 最近ではニッケル水素電池と昔ながらの車載バッテリーをつないで、相互に能力をアップさせる仕組みなどもあるようだが、果たしてどの手法を取って来るか。バッテリーの重量低減ができるかどうかは燃費を改善できるかどうかの重要な分岐点になるだろう。
白熱する2015年
2015年は自動車にとって面白い年になりそうだ。三“車”三様に立ち位置が違う。そしてどれもが日本の自動車産業の行方を占うものになっている。3台のクルマはそれぞれどんな答えを出し、それを市場はどう受け止めるのだろうか? 自動車の技術が2015年の日本を明るく楽しくしてくれることを祈りながら筆をおきたい。 (池田直渡・モータージャーナル)