“豊作の年” 注目の3台の新型がデビュー 2015年クルマ業界展望
燃費戦争のオーバーヒート
申し訳ないが少し余談にはいる。燃費競争のことについてどうしても書いておかなくてはならないことがあるからだ。本来燃費は目標ではなく結果だ。ちゃんと安全で快適で気持ちよい走りを実現した上で、結果として燃費がどうだという話でないとおかしい。 作っている側が「燃費のレコードブレーカー」という特殊な記録競技車を作っているという認識なら仕方ないが、そうではないはずだ。多くの人々が日々の暮らしの中で使うクルマを作っているのではないのか。であるにも関わらず、低燃費が「ユーザーに良かれの技術であるかどうか」が業界全体に、だんだん怪しくなってきている。 ライバルに勝ちたいのも解るし、カタログ燃費の数値にユーザーが敏感に反応する現状もわかる。しかし熾烈な燃費トップ争いのためにドライバビリティや、ともすると低ころがりタイヤの採用によってウェットグリップの様な安全性までも犠牲にしかねない姿勢には正直疑問がある。 無軌道な競争に発展しかねない現状に対し、日本の製造業のリーディングカンパニーであるトヨタは真っ先に範を示し「人々を本当に幸せにする製品」を胸張って提示して欲しい。 低燃費が第一にユーザーのことを考えてのものなのか、競合他社に勝つためのものなのか、それは似て非なる思想だ。これだけのユーザーがいるプリウスがタダの燃費のチャンピオンにならず、素晴らしい乗用車であることは多くの人々の幸せに直結するはずだ。 余談は終わる。ここから技術的にトヨタはどうやって燃費競争に勝っていくつもりかを書かねばならない。その競争の是非は置いて。
プリウス軽量化計画
さて、トヨタが新型プリウスでライバルに勝たなくてはならないとすれば、どこに着手するのだろうか? ハイブリッドシステムは、バッテリーの寿命とエネルギー回生のバランスで、もうそう無茶な燃費効率改善代はない。何らかの改善はもちろん加わるだろうが、そこにもうたっぷりと埋蔵金は埋まっていないのだ。となれば着手するのは重量だ。 ハイブリッドは重い。エンジンの他にモーターがあり発電機があり、バッテリーがあるのだから仕方が無いが、同じCセグメントに属するガソリン車のカローラ・アクシオが1140kgなのに対してプリウスは1350kgある。200kg以上の重量差があるのだ。 ここには埋蔵金がありそうだ。とくに動力分配機構だ。確かにこの機構は、プリウスとトヨタが世界のエンジニアからリスペクトを受けた図抜けた天才的発明であったがゆえに、過去3世代オリジナルのデザインを踏襲して来た。 が、しかし、重量を低減しないと一番になれないという現実の前に、遊星ギアによる変速機構をどうやら止めるつもりらしい。遊星ギアは大きく重い。初代プリウスが出た時とは事情が違ってきたのである。新世代の動力分配システムはおそらく普通の歯車と電制クラッチを組み合わせたもっと簡易な仕掛けになってくるだろう。