【あの人の仕事場から学ぶインテリア / Case02】自分にとってノイズのないデザインされた空間
●職住一体の住まいに潜む偏愛のディティール。|竹田嘉文(イラストレーター)
クリエイターたちが、その創作哲学を表現する空間には、真似したいインテリアのアイデアが詰まっています。発売中の特集『仕事場とインテリア。』より、色使い、DIY、収納など、仕事場を形づくる独自の視点に迫ります。 【フォトギャラリーを見る】 全6回にわたる本企画の第2回は、緻密なイラストレーションで知られる竹田嘉文さん。自らも設計に関わった自宅の一室に設けた仕事部屋は、竹田さんにとってノイズのないデザインされた空間です。 緻密な描写によるイラストレーションで人気を集める竹田嘉文さん。デジタル化が進んだことで以前より道具類が不要になったとはいえ、その仕事場は驚くほどに整然としている。 住まいの一室にある仕事部屋は、若い頃から好きなバウハウスや東西ドイツの住宅のイメージを参照したものだ。特に影響を受けたのは、戦後ベルリンの住宅不足解消のために開かれた集合住宅の博覧会『インターバウ』。その建築群のイメージを基にデザインを行い、施工を依頼。床材はバウハウス初代校長のヴァルター・グロピウスの自邸を参考にコルクタイルを使用した。すべての部屋で建具やスイッチを統一するのは「ある種の規則正しさと、昔ながらの安価な工業製品の素材感への関心が強いから」だという。家具は窓や床のラインを手がかりに整然と配置されている。
「模様替えが好きでよくしますが、好みの範囲がとても狭いのでテイストは変わりません」と竹田さんはいうが、この規則正しい空間が彼には心地よく、仕事をはかどらせる。アイボリーから白のグラデーションで統一した室内は、一般に無味乾燥としたテイストと捉えられる既製品を巧みに組み合わせた。安っぽさを感じるプラスチックが黄変していく表情が好みだといい、使い勝手が悪くともプラスチック製のブラインドを選んだ。住空間もそうだが、それ以上に彼の偏愛ともいえる美意識が仕事場を貫いている。 竹田さんは職住一体であることから子どもとの時間も確保しつつ、昼夜に作業の時間を設けている。息抜きとなるのは、10代の頃から好きなDIYで棚や家具を製作すること。それら家具もA4サイズがぴたりとはまるよう緻密に計算されるなど、自身のイラストレーションにも通じる美学を持つ。時間とともに、この空間は竹田さんが望むやれた風合いへと変化することだろう。それこそが自身にとって心地よい空間なのだ。
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photo_Satoshi Nagare text_Yoshinao Yamada