就活生から選ばれる会社になるために地方の段ボール会社社長が仕掛けた施策とは?
どの業界でも人手不足が叫ばれるなか、多くの企業が人材採用には苦労している。特に中小企業は、ただでさえ新卒の入社希望者が少ないだけでなく、その数少ない入社希望者に採用内定を出しても、正式採用前に内定を辞退されてしまうという事態が増えている。 【グラフ】内定を保有しながら就活を続けた24年度卒業予定の学生はどれぐらいいる?調査結果をグラフでチェック 採用や就活に関する実態調査などを行っているインタツアー社が2024年3月卒業予定の就活生を対象に行なった「選考辞退・内定承諾についての調査」によると、内定を辞退したことがある人は55.8%、つまり半分以上にも及んだという。 これでは自社の採用計画に大きな支障が出てしまうことから、内定辞退者を減らすための対策を取る企業も増えている。例えば、内定者に自社の福利厚生の一部のサービスを入社前から提供する企業や、昨今は就活生の両親が子供の就職先を判断したりすることから、家族への手紙を内定者に渡す企業もある。
コロナ禍収束後から増えてきた内定辞退者
そういった中で、独自の方法で内定辞退者を減らそうと努力している企業がある。それが、富山県富山市に本社を置く段ボール製造会社のサクラパックス。創業は昭和22年で、3代目社長の橋本淳氏が2008年に先代から社長を継いで以降、14年ほどの間に年商が100億円にまで倍増したという、地方で急成長した中小企業である。 そんな優良中小企業でも、コロナ禍以降は新卒の採用に苦労しており、しかも、採用内定を出した就活生の約半数が内定を辞退してしまう状況に陥っているという。そんな近年の新卒採用状況の変化について、サクラパックスの橋本社長はこう語る。 「うちは単なる四角い箱の段ボールだけを作っているのではなく、特殊な設計を伴う付加価値のあるパッケージが得意な会社であることと、段ボールを使った社会貢献を数多く行って世の中を笑顔にしている会社であること、この2つのブランディングでこれまで攻めてきました。 特に後者に関しては刺さる学生さんが多く、他社さんが採用で苦労している中でも、比較的多くの就職希望者が集まって、内定辞退者もほとんどいませんでした。ところが、コロナ禍が明けた頃から内定辞退者がかなりの割合で出てくるようになってきました。内定を5、6月に出すと、10月頃には内定者の数が半分くらいになってしまうのです。それに加えて、会社説明会に来る人も以前の半分に減っています」 自社を蹴った内定辞退者が最終的にどこに就職したかを見ると、自動車関連や医薬品関連の企業といった、就活生たちが本命にしていたと思われるところが多い傾向にあると橋本社長は言う。逆にいうと、内定を辞退しなかった就活生の多くは、本命の会社に採用されなかったからサクラパックスに入社したということになる。 発展を続ける安定した会社、付加価値のある製品作り、社会貢献に力を入れているといった特色だけでは、就活生たちの心に響かなくなっている。「内定をもらった、会社もイイ、けど作っている商品が……」。つまり、どんなにいい会社でも、段ボールを製造する会社に積極的に入社したいという就活生は少ないというわけである。