「カフェすら座れない」「ディズニーも40代以上の利用者が急増」…。東京で静かに進む、お金のない若者の排除の実態と、都市に生まれている“驚きの光景”
本来ならばもっと細かくデータを参照すべきではあるものの、大まかに30代未満を若者だとするならば、さまざまなデータが若者の経済的な苦しさを物語っていることは間違いない。 街が「お金を使わないと楽しめない」方向になるにつれて、こうした若い人々の居場所が失われ、公言はされないけれども実質的には排除が起きている。これを「静かな排除」と呼びたい。 ■「若者のディズニー離れ」言説から見る「若者の静かな排除」 「論理の飛躍では?」と言われることを恐れながらも、この点で最近話題のトピックについても触れてみたい。それが「若者のディズニー離れ」だ。
大手テーマパークとして知られる東京ディズニーリゾートのチケット料が値上がりを繰り返し、日によっては1万円を越す日も現れた。その結果として、他世代と比較してお金のない若者にとって行きにくい場所となり、「若者のディズニー離れ」が生じている……という言説だ。 実際、データを見ていくと、オリエンタルランドが公開しているファクトブックを見ると、「大人(40歳以上)」の層が大きく増加しているのに対し、「中人」(12歳から17歳)「小人」(4歳から11歳)」は減少している。
なお、もうひとつの層である「大人(18~39歳)」は、データ範囲がなかなか広いため、「若者」の定義が曖昧なこともあって、このデータだけで「若者のディズニー離れ」と決めつけるのは拙速かもしれない。 だが、全体としては、以前より来場者の年齢層が上昇の傾向にあるのは、間違いないだろう。 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、コロナ禍での大幅な来場客の減少を経て、“量”を入れて収益を取る方向から、それぞれのゲストの体験の“質”を深める方向に転換することを公式に発表している。来場者を限定し、それぞれのゲストの体験の“質”を深める方向に舵を切ったのだ。
裏返していえば、廉価で多くの客を入れる方向から、少数精鋭の客により多くの消費をしてもらうのだ。ディズニーランドも、多くの人に開かれた「夢の王国」から、ひとり数万円の出費が可能な人向けの「現実の王国」になっている。 もちろん、企業が利益を追求することを否定するわけではない。むしろどんどん儲けるべきだ。しかし、短期での利益回収をもとめるときに手っ取り早いのは、ある程度お金を持っている人をターゲットにしてたくさんの消費をさせること。必然的に消費額が少ない若年層向けの選択肢は少なくなっていく。