「カフェすら座れない」「ディズニーも40代以上の利用者が急増」…。東京で静かに進む、お金のない若者の排除の実態と、都市に生まれている“驚きの光景”
実際、歌舞伎町の取材を続けるライターの佐々木チワワ氏に聞いたところ、締め出されたトー横キッズたちは、すぐ横の区画に移動しているだけだという。 そもそもの問題の根源を見直さなければ、治安向上にはつながらない。それどころか、歌舞伎町にぽっかりと空いた空間は「単にみんなが使いにくい」あるいは「もったいない」土地を生むだけになっているのだ。もっと長期的な視点に立たなければ、治安改善も、街の魅力の向上にもつながらないのである。
渋谷の場合も、街のターゲットをビジネスマンやインバウンドにすることは間違っていないだろう。しかし、それが、長期的にどのような影響を渋谷に及ぼすのかを考える必要がある。 例えば、コロナ禍のようなパンデミックがもう一度起こり、完全にインバウンド観光客が断たれたら? あるいはなんらかの事情でオフィス需要が急激に低下したら? そうなったとき今の渋谷は「ただビルだけがある」街になってしまうかもしれない。しかも、未来の重要購買層である若者たちは渋谷から排除されていたのだから、特にそこに思い入れがない。とすれば、街全体のにぎわいが低下してしまう未来もある。
まさに「若者の静かな排除」の結果として、こうした光景を想像することは難しくないのだ。 こうした「街の高級化」は結局、街全体の利益を損ねる結果につながりかねないか? 単に若い人の「静かな排除」を糾弾するだけではなく、長期的な視点から見て、社会的な不利益が生じていないかどうかも考える必要があるだろう。 前回の記事はこちら:東京に『座るにも金が要る街』が増えた本質理由 疲れてもカフェに入れず途方に暮れる人へ
谷頭 和希 :チェーンストア研究家・ライター