池上彰氏が予測する「10年後の未来」 給料が上昇する人・しない人を分けるものは?
この10年だけ見ても、私たちの生活は大きく様変わりした。それだけに、「この先10年はどうなるのか」と不安を覚える人もいるだろう。大きな変化に翻弄されずに「自分らしく生き、働く」にはどうしたらいいのか? そういう難問はこの人に聞くしかない。『THE21』2024年11月号では、難しい問題を誰にでもわかりやすく説明する達人・池上彰氏に話を聞いた。(取材・構成:石澤寧) 【解説】池上彰氏が考える「年長者の古い考え方」 ※本稿は、『THE21』2024年11月号特集「これから10年の生き方・働き方」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
良い未来か悪い未来かは、私たちの選択次第である
社会の変化のスピードが早い時代になりました。これまでの当たり前が当たり前ではなくなり、新しいやり方やルールが続々と登場しています。そうした変化を目の前にして、多くの人が不安を感じているのではないでしょうか。 たしかに世の中の変化は急激ですが、私は、そんなに悲観したもんじゃないよ、と伝えたいと思っています。この夏に出版した『池上彰の未来予測 After2040』という本の中でも書きましたが、変化には必ず良い面と悪い面があります。例えば、AIが発達してなくなる職業が出てくる一方、AIを活用することで、労働力不足が解消されて、より便利で快適な生活が実現するかもしれない。 また、労働力不足についても、見方を変えれば働き手の希少性が高まったと考えることができます。実際、最低賃金の目安は上昇していて、2024年度は前年比過去最大の50円の上昇となり、時給の全国平均は1054円になっています。 昨年、台湾の世界的な半導体メーカー・TSMCが熊本に工場を作ったところ、熊本だけでなく近隣の県の賃金相場も上昇したそうです。企業が人材の獲得競争をすることで、ITなどの成長産業に関わっていない人の給料も上がり始めています。 このように、一見マイナスに見える労働力不足という話題にも、見方を変えれば良い面やメリットがあります。変化に対して不安になるのは人間の性だと思いますが、そこには新しいものが生まれるプラスの可能性もあるのです。そしてそのプラスの可能性は、私たちの行動や努力次第で高めることができます。 未来予測の本を出したのも、これから起こり得る様々な未来の姿を提示することで、読者の皆さんに自分の選択について考えてもらいたかったからです。 未来は決して決まっているものではなく、私たちの選択に委ねられているということを、まずお伝えしたいと思います。