IKKOパニック障害との地獄の日々。不安と発作の壮絶な闘い
IKKOパニック障害との地獄の日々。不安と発作の壮絶な闘い
タレントが活動休止を相次いで公表したことにより「パニック障害」の認知度は高まりつつあります。先進国の“現代病”とも言われており、一生のうち20人に1人が発病すると言われるほど身近な病気ですが、その詳しい原因は分かっていません。そこで今回は、実際にパニック障害を経験し苦しんだIKKOさんと精神科専門医である岩谷泰志先生にパニック障害との向き合い方について対談していただきます。 【動画】IKKOが涙で語る、壮絶な闘病の全貌
オカマという心無い言葉に傷ついたトラウマと「パニック障害」に悩んだ過去
岩谷先生: パニック障害を発症して時間も経っていると思いますが、今でも症状が出ることはありますか? IKKOさん: そうですね。完璧に治ってはいなくて、発作まではいかないのですが、疲れていると症状が出そうになることもあります。 岩谷先生: 最初に症状が現れたのはいつ頃ですか? IKKOさん: 経営者になった30代の10年間で少しずつ苦しさや喉にしまりを感じるようになりました。 岩谷先生: 最初にパニック発作が起きた日のことは覚えていますか? IKKOさん: はい。鮮明に覚えています。 岩谷先生: どのような状況でしたか? IKKOさん: 39歳の11月20日に初めて発作が起きました。その日は雨が降っていたのでタクシーで病院まで移動したのですが、渋滞に巻き込まれて、外にも出られず不安になったことを覚えています。病院に着いたときには脈拍数が上がって血圧も200以上になり、当時は過換気障害と診断されました。 岩谷先生: 初めて発作が起きるとびっくりしますよね。 IKKOさん: そうですね。パニック障害とは何なのでしょうか? 岩谷先生: パニック障害は突然、動悸や呼吸困難、めまい、口の渇き、しびれなどの発作(パニック発作)が起こる病気です。目の前が暗くなり、死んでしまうのではないかと思うくらいの恐怖を感じることもあります。 IKKOさん: パニック発作はなぜ起きるのですか? 岩谷先生: 現在も原因は不明ですが、交感神経の緊張や不安障害が深く関係していると考えられています。重要なのは、その緊張や不安が何で起こっているかを知ることです。 IKKOさん: 根本の問題について知ることが大切だということですね。 岩谷先生: はい。目標に向かう自分の思いが強ければ強いほど、成功や失敗に対する緊張が高まります。IKKOさんの場合は自分の目標が高く、責任のある立場にプレッシャーを感じていたのかもしれません。 IKKOさん: そうかもしれません。経営者だった30代はたくさんの弟子がいたので、その弟子たちを指導しながら経営していくことが自分のキャパを越えていたと感じます。 岩谷先生: 具体的に何があったのでしょうか? IKKOさん: 経営者になって最初の5年は、自分でアトリエを持ち自由に仕事ができることも悪くないと思っていました。ただ、35歳くらいから自分が一生懸命やっている割には、現場のリズムがうまくとれないことに疑問を感じ始めたのです。 岩谷先生: もう少し詳しく教えてください。 IKKOさん: メイクの仕事はすごく集中力が必要な仕事で、現場のリズム感がすごく大切です。ただ、経営者として育てた弟子はほかの現場にも出さなければいけません。その分、自分の現場には一から仕事を教える弟子が来ることになるので、現場のリズムがうまくとれず周囲からの評価が落ちているのではないかと感じていました。 岩谷先生: 自分の理想としている仕事のリズムと、周囲からの評価にギャップがあると感じていたのですね。パニック障害を起こす人は、神経質で理想像も高く自分ができていないと感じる傾向があります。周りから見てダメな人間だと思われているのではないかと気にしている人も多いようです。 IKKOさん: 分かります。 岩谷先生: その根底にあるのは自分を愛する自己愛です。特に自分の目標が高い人は自分に対する合格や不合格を極端につけてしまう傾向があり、自己愛が強いことで成功する人もいますが、自分はダメだと自己嫌悪に陥っていく場合もあります。 IKKOさん: 私の場合は幼少期のトラウマも関係していると思います。オカマという心無い言葉を受けた時の感情が私の胸をえぐるように残っていて、幼少期はずっと自分の殻に閉じこもっていました。 19歳で上京した後は自分を全否定されているように感じていました。「私ってそんなにダメなのかな?」と感じた昔の自分には、二度と戻りたくないという思いも関係しているのでしょうか? 岩谷先生: そうですね。もし自分の理想通りに仕事を追い求められなければ、また自己肯定できない当時の自分に戻ってしまうのではないかという不安が高まってくるのだと思います。 IKKOさん: 今だったら分かるのですが、当時はストイックにやることが正しいと思っていました。なるべく昔の感覚には戻りたくないという気持ちがストイックさにつながっていたのかもしれませんね。