日銀・黒田総裁会見1月21日(全文1)サービス消費で下押し圧力強まる
緊急事態宣言が与える物価の影響は
産経新聞:産経新聞の大柳です。1点目は物価についてなんですけれども、今回、緊急事態宣言で飲食店の閉店時間を短くしたりとか、ステートメントでも「対面型サービス消費を中心に下押し圧力の強い状態が続くとみられる」ということなんですけれども、この辺りが物価に与える影響、供給制約とかもあると思うんですが、Go To トラベルとか原油価格の下落については触れているんですけれども、緊急事態宣言が与える物価の影響、むしろ見通しで見ると若干ですがプラスに作用しているということになっているんですけれども、この緊急事態宣言が与える物価の影響についてはどのようにみられているのかというのが1点目です。 2点目は先ほどの、3月に公表される金融政策の点検についてなんですが、先ほど問題意識の中で副作用対策ではないというご発言ありましたけれども、どうしても効果的な政策を取ろうと思えば副作用も強くなると思うんですが、その辺のバランスについてはどのようにお考えでしょうか。以上2点、お願いいたします。 黒田:今回の展望レポートでも経済の成長見通しと、それから消費者物価の見通しについて委員方の中央値をお示ししているわけですけれども、10月時点の見通しと比べますと、実質GDPについては2020年度は中央値がマイナス5.6%ということで、10月の見通しの5.5%のマイナスから見ますと、0ポイント、0.1%ポイント多い下げになってるわけですが、他方で2021年はプラス3.9ということで、10月時点の見通しの3.6%から見ると0.3%上振れているわけですし、2022年度についても10月の1.6%に比べますと、1.8%。0.2%上振れているということであります。
物価の動きを引き続き注視
他方、物価についてはどうかということですが、物価については2020年度の足元の状況を見ますと、10月時点のマイナス0.6%に比べて、0.1%ポイント上方修正されてマイナス0.5%ということになっております。その上で2021年度を見ますと、プラス0.5%っていうことで10月の見通しの0.4%よりも0.1%ポイント上振れており、2022年度は0.7%ということで10月と同じということで。実質成長率のほうは2020年度は若干下振れて、2021、2022年度と上振れているわけですけれども、物価のほうはあまり大きく振れてないと。10月の見通しとおおむね変わらないということであります。 その中には先ほど来申し上げたように、一方で確かに緊急事態宣言が発出されて対面型サービス消費を中心に下押し圧力が強いということで、実質経済成長率にはそれなりの影響が出てきているわけですので、2020年度の成長見通しがマイナス幅を少し拡大したわけですけれども。 他方で、そういった対面型サービスについてもこの段階で何か価格を下げて、値段を下げて需要を取り込もうという動きはあまり見られない。まさに緊急事態宣言の下で外出とかその他が、消費者の行動が変わって抑制されているわけですので、そうした時点で価格を下げて、対面型サービスの需要を拡大するという動きは見られないわけですので、緊急事態宣言の下で対面型サービスを中心に下押し圧力が強いと。で、成長率も若干2020年度については引き下げたわけですけれども、それが物価のほうに大きく影響するというような状況にはなっていないわけです。 さらに2021年度、2022年度といいますと、経済対策であるとか、それから基本にはもちろん世界経済の回復ということもありますけれども、政府のかなり大規模な経済対策、そして日本銀行が引き続き緩和的な金融環境をつくり出していくということから、実質成長率は上振れているんですけれども、他方で物価上昇率はほとんど変わってないということであります。こういうふうにこの現時点でのこの経済の動きというのは通常の動きとやや異なっている面もあるというふうに思いますけども、いずれにせよ物価の動きについては引き続き注視していくということには変わりございません。