城氏が語る「苦肉のA代表VS五輪代表に意義はあったのか」
加えてFWの人選を含めた得点能力への不安も浮き彫りになった。2人あるいは3人のFWに誰を選ぶのか。積極性を見せた林、前田にしても一長一短がある。 ようするに東京五輪を50日前にしてUー24代表は未完成なのだ。残り3試合しかない段階でメンバー選考をやっている場合ではなかった。 そもそもは日本サッカー協会の五輪世代の強化プランに問題があるのだが、中長期とまでは言わないが、東京五輪でメダルを獲得する計画をもっと前倒して練るべきだった。ある程度、チームのベースとなる骨格を固めておき、足りない部分、強化したい部分に競争の原理を働かせる。もしくは、そこにOA枠を加えるといった綿密な前を見据えたプランを組んでチーム強化を進めるべきだった。新型コロナの影響で東京五輪が1年延期され、代表の活動がままならない期間があったゆえになおさらだ。今となっては遅い。この日のゲームで明らかになったが付け焼き刃で、人を集めて勝てるほどシステムは成熟していない。厳しい言い方にはなるが、現段階では金メダルどころか、グループリーグ突破も難しいだろう。 A代表と五輪世代のガチ勝負は史上初めての試みだったという。私が五輪代表時代もA代表との試合を組んでもらいたかったし「やれば勝てる」の自信もあった。A代表が予定していたジャマイカのメンバーが揃わず、急遽、組まれた苦肉の策ではあるが、ファンの興味を集め、両チームに緊張感も生んだ。試みとしては評価すべきものだった。 A代表の側から見れば、トップ下で起用された鎌田が存在感を示した。ボールを収めることのできる選手が大迫一人だったところに鎌田のような選手が出てきたことは大きい。2列目のオプションが増え、競争が激しくなるのはプラス材料だ。 その一方で、メンバー選考にせっかくの異例マッチをあてはめてしまったUー24代表の戦い方を見ると「果たしてこの試合に意義があったのかな」という疑問も浮かんだ。 (文責・城彰二/元日本代表FW)