JR東海支援のテキサス新幹線、親日アムトラック副社長が明かした「名称案」 車両は「日本メーカーが製造」、単独インタビューで明言 連載『鉄道なにコレ!?』(第65回)
それでも、肝となる資金調達などの課題を乗り越えられるかどうかは依然不透明だ。バイデン氏は36年間の連邦上院議員時代に往復約3時間かけてアムトラックで通勤し、車掌や他の利用者らと親交を深めて「アムトラック・ジョー」の愛称を持つ理解者だ(本連載第15回参照)。 バイデン氏は高速鉄道の整備で「中国に後れを取っている」と問題視しており、推進に向けて連邦政府資金を順次割り当てている。アムトラックが主導して進められるテキサス新幹線計画も、本格的な支援を受けられる可能性を秘める。 しかし、11月の大統領選で民主党候補のバイデン氏と争う共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が当選する「もしトラ」がリスクとなり得る。トランプ氏は「地球温暖化は中国のでっち上げだ」と温暖化に懐疑的な立場を取っており、温暖化対策のために公共交通機関の整備を促進するとのマインドは望み薄だ。 バイフォード氏は「力強い事業を構築し、アメリカで雇用を創出して経済成長をもたらすことができれば、どんな党派の政治家にも受け入れられる」と期待する。だが、型破りなトランプ氏のも通用するかどうかは見通せず、アムトラックのバイデン政権との距離の近さがマイナスに働く可能性も否定できない。
民間からの資金調達に関しても、アメリカの金融関係者は「投資家は米国の旅客鉄道は利益が出ないと受け止めており、恒常的な赤字で補助金頼みのアムトラックが協力しても説得力がないため資金調達は依然困難だろう」と否定的だ。実際、アムトラックは2023年9月期決算(23年9月末までの1年間)の本業のもうけを示す営業損益が18億4千万ドル(1ドル=160円で2940億円)の赤字となり、赤字額は新型コロナウイルス禍の影響が続いていた前期(18億3100万ドル)からさらに膨らんだ。 日本が誇る新幹線を世界最大の経済大国のアメリカで走らせる壮大な計画の実現には難題は多く、高速列車のようなスピード感で進まないことは確かなようだ。 ※『鉄道なにコレ!?』とは:鉄道に乗ることや旅行が好きで「鉄旅オブザイヤー」の審査員も務める筆者が、鉄道に関して「なにコレ!?」と驚いた体験や、意外に思われそうな話題をご紹介する連載。2019年8月に始まり、ほぼ月に1回お届けしています。鉄道以外の乗り物の話題を取り上げた「番外編」も。ぜひご愛読ください!