二十歳のとき、何をしていたか?/永井博 アメリカの風景に魅せられ、描き続けた。 スーパーリアリズムの潮流のなか、 自分だけの色と線を手に入れた。
「本の中に広告用に描いたリッキー・ネルソンの絵があって、リッキーの『A Long Vacation』という曲の歌詞を大瀧くんが引っ張り上げたんです。それがタイトルになって、すごく売れてね。この本をベースに彼が同名のアルバムを作ったら、そのジャケットにもなった。それもヒットして」
32歳で思いがけず評価を得た永井さん。美大には行けなかったけれど、20代を通してイラストを描き続け、自分だけの手法やモチーフが世間に認められた。飛田給で過ごした二十歳の日々は灰色だったかもしれない。でも永井さんはこうも話す。
「あの頃っていうのはね、灰色でも、次の年はよくなる時代だったんです。なんだか広がっていく、みたいなね。だから諦めてなかったと思う。希望があったんだよね」
AT THE AGE OF 20
「二十歳の写真はないけど」と見せてくれた1980年の『ポパイ』には、現ムーンスターの広告に登場した32歳の永井さんが。『A LONG VACATION』を出したあとくらい。パーマが似合う! そういえば二十歳の永井さんを支えた“おじさん”のことも気になる。「おじさんは、もともとジャズっていう洋服メーカーで働いてたの。お洒落でカッコよくてね、プリンスホテルのショーでは水色のスーツを着ていて、背が高くて外国人みたいだった。みんな英語で話しかけてたよ」
プロフィール
永井博 ながい・ひろし|1947年、徳島市生まれ。グラフィックデザイナーを経て、’79年『A LONG VACATION』を刊行。’83年に湯村輝彦のフラミンゴスタジオに参加。大瀧詠一、サザンオールスターズなどのジャケットを手掛ける。近年はアートとしても高い評価を受ける。 photo: Takeshi Abe, text: Neo Iida(2024年6月 926号初出)
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