名古屋がJ2降格! 復帰した闘莉王の来季はどうなる?
混乱をきたしている思考回路を、何度も再起動させていたのだろう。必死に紡ごうとする言葉は途切れがちになり、うっすらと涙がにじんでいる両方の瞳はどこか遠くを見つめている。 Jリーグが発足した1993シーズンから戦い続けてきた、J1の舞台を去ることが決まってから数十分後。取材エリアに姿を現した名古屋グランパスのDF田中マルクス闘莉王は、何度も自分自身を責めた。 「何と言ったらいいかよくわからない。責任を感じている。一戦一戦を必死にやってきたことは間違いないんだけど、最後の最後、まだ希望があったにもかかわらず、サポーターがあれだけ素晴らしい雰囲気を作ってくれたなかで負けてしまい、声援に応えられなかったことに、いまは『ごめんなさい』という気持ちしかない」 すでにJ2降格が決まっている湘南ベルマーレをホームに迎えた、3日のJ1セカンドステージ最終節。キックオフ前の時点で、名古屋はJ2降格圏の16位にあえでいた。目の前の戦いを制し、そのうえで残留を争うジュビロ磐田、ヴァンフォーレ甲府、アルビレックス新潟の結果を待つしかない。 前売り完売の1万8474人の大観衆で埋まったパロマ瑞穂スタジアムが静まり返ったのは、開始わずか6分。湘南のMF山田直輝がペナルティーエリアのやや外側から迷うことなく左足を一閃。闘莉王の右手をかすめ、微妙にコースを変えた一撃がゴール左隅に突き刺さってしまう。 前半37分にも追加点を許して迎えた後半5分。PKをFWシモビッチが決めると、流れは一気に名古屋へと傾く。相手DFに防がれたものの、2分後には闘莉王のヘディング弾が湘南ゴールを襲う。同点、そして逆転へ。高まったムードはしかし、15分に萎んでしまう。 自陣の右タッチライン際に、湘南の縦パスが弾む。争ったのは闘莉王と山田。サイズは185センチ、82キロの前者に対して、後者は168センチ、68キロ。しかし、球際の争いに勝利したのは山田であり、バランスを失った闘莉王はその場に転倒。勝負を決定づける山田の2ゴール目を、なす術なく見つめるしかなかった。 「闘莉王さんは上手いので、あの場面でも外へ出すとか、簡単には蹴らないことはわかっていた。ボールと足がちょっとだけ離れた瞬間に、体を入れてボールを奪おうと考えていました」 浦和レッズ時代の後輩で、闘莉王のプレースタイルを熟知していた26歳の山田が狙い通りだったと言葉を弾ませる。対照的に8月下旬に電撃復帰を果たし、湘南戦が7試合目となった35歳は、大一番で致命的なミスを犯した自身を再び責めた。 「1点目も2点目もそうだけど、ああやって見事なゴールを決められると、流れや展開といったものが非常に難しくなってくる。いままでの自分のサッカー人生における、いい出来事をすべて残留と引き換えてもいいくらいの思いで臨んだけど…こういう場だと何を口にしても言い訳になるし、とにかくこの7試合を一緒に戦った仲間に、クラブのスタッフに、期待してくれたファンやサポーターの方々に、申し訳ない気持ちでいっぱいです」