始業は9時からですが、上司に「朝礼は8時50分から」と言われています。1日10分ではありますが、これって「タダ働き」ではありませんか? 残業代の対象になるのでしょうか?
会社員にとって朝の10分は貴重です。しかし、始業時間が9時であるのに8時50分から朝礼があるなど、始業時間前に朝礼が開始されるとなると、その分早く出勤しなければなりません。この場合の朝礼は単なる慣習であり、労働にはあたらないのでしょうか? 本記事では朝礼が法的に労働とみなされるのか、その判断基準について解説します。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
朝礼が義務づけられているかがポイント
労働とみなされるには、朝礼が義務づけられているかどうかがポイントです。「労働時間」とは、使用者の指揮命令下で、明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間と定義されています。 つまり、会社が朝礼を義務としている場合は、労働時間とみなされるということです。では、義務としているかどうかはどう判断されるのでしょうか。 ■義務と判断されるケース 朝礼が義務と判断されるケースには以下のようなケースが考えられるでしょう。 ・就業規則や社内のルールブックなどに朝礼の参加が明確に指示されている場合 ・上司からメールなどで参加を促すような通知がある場合 ・口頭で何度も参加の指示を受けている場合 このような場合は客観的に見て、文書や口頭で指示があると分かるため、朝礼の参加が義務づけられていると判断されます。 ■義務ではないと判断されるケース 例えば、朝礼への参加は任意であると言われていたり、特段指示や命令はされていないが、早く来た人だけで開催されていたりする場合などは、義務づけられているとは言えないでしょう。 古くからの慣習や、暗黙の了解で行われていて「なんとなく行かないといけない」と思ってもこれらの場合、基本的には義務ではないと判断して問題ありません。
労働時間と判断されれば残業手当の支給対象となる
朝礼が義務であれば、その時間は労働時間と判断され、労働時間をオーバーする分については会社側は残業手当を支払う義務があります。 残業手当は就業時間後の労働に対して発生するイメージが強いですが、始業前でも規定の労働時間を超えて働いているのであれば支給されます。 では、始業前の10分間の朝礼の残業代は、いくらになるのでしょうか。厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査 令和5年9月分結果速報等」の資料にある、一般労働者の1ヶ月あたりの平均残業代と平均残業時間(図表1)を基に計算します。 図表1