健康に良い食べ物は野菜、魚、そして〇〇! ただし、NGな食べ方も。エビデンスに基づいた“積極的に食べたいもの”はコレだ
“茶色い炭水化物”は、心筋梗塞や脳卒中のリスクを21%も減らす
そして3つめは「茶色い炭水化物」だ。 「茶色い炭水化物」とは、玄米、蕎麦、全粒粉を使った茶色いパンなど、精製されていない炭水化物のことを指す。 数々の研究において、精製されていない「茶色い炭水化物」は健康に良いと報告されている。アメリカ、英国、北欧の国々で行われた研究を統合した78万6000人のデータを用いた研究によると、1日70gの茶色い炭水化物を摂取したグループは、それらをほとんど食べないグループと比べて死亡率が22%低かった。 7つの研究を統合した別の研究によると、茶色い炭水化物を多く食べるグループ(1日2.5単位以上)は、少ないグループ(1日0・2単位未満)と比べて心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化によって起こる病気になるリスクが21%低かった。 糖尿病のリスクが下がることも複数の研究結果によって明らかとなっている。 玄米を多く食べるグループ(週に200g以上)は、玄米をほとんど食べないグループ(月に1 00g未満)と比べて糖尿病になるリスクが11%低かった。この研究によると、1日50gの白米を玄米に置き換えることで糖尿病のリスクを36%下げることができると推定された。 このように健康メリットの大きい茶色い炭水化物であるが、注意しなくてはいけない点もある。 スーパーやコンビニのパンの中には、「全粒粉」と書いてあっても実は全粒粉が少ししか含まれておらず、ほとんどが精製された小麦粉という商品もあるので気をつけてほしい。また、蕎麦についても十割蕎麦や二八蕎麦のように、できるだけ蕎麦粉の割合が高いものを選ぶのが良いだろう。
「最新の研究で健康にいいことが明らかに!」をすぐ信じてはいけない
ところで、皆さんがテレビやネットなどのメディアで毎日のように目にする「健康に良いということが最新の研究で明らかになった」とうたわれる食品のほとんどは、「ひょっとしたら健康に良いかもしれない」というグループに属する。 つまり、健康に良いという研究結果が1つ2つあるかもしれないが、本当に健康に良いのかはまだ確定ではない。 数か月後には同じ食品について「最新の研究で健康に悪いことが分かりました」というニュースを目にすることになるかもしれないし、実際にそういったことはしばしば起こる。そのような「賞味期限の短い健康情報」に一喜一憂することにあまり意味はない。 本記事で紹介した「健康に良い食べ物」は複数の信頼できる研究で報告された食品である。 目新しさや話題性はないかもしれないが、やはりすでに健康に良いことが長年の研究から証明されている食品を日々の食事に取り入れることこそが健康を確約すると言える。 図/書籍 津川友介著『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より 写真/shutterstock 参考論文 ・Zhao LG et al. Fish consumption and all-cause mortality: a meta-analysis of cohort studies. Eur J Clin Nutr. 2016;70(2):155-161. ・Yamagishi K et al. Fish, ω-3 Polyunsaturated Fatty Acids, and Mortality From Cardiovascular Diseases in a Nationwide Community-Based Cohort of Japanese Men and Women The JACC(Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk) Study. J Am Coll Cardiol. 2008;52(12):988-996. ・Mozaffarian D & Rimm EB. Fish Intake, Contaminants, and Human Health: Evaluating the Risks and the Benefits. JAMA. 2006;296(15):1885-1899. ・Zheng JS et al. Intake of fish and marine n-3 polyunsaturated fatty acids and risk of breast cancer: meta-analysis of data from 21 independent prospective cohort studies. BMJ. 2013;346:f3706. ・Wu S et al. Fish Consumption and Colorectal Cancer Risk in Humans: A Systematic Review and Meta-analysis. Am J Med. 2012;125(6):551-559.e5. ただし、日本人におけるエビデンスは不十分である。 ・Song J et al. Fish Consumption and Lung Cancer Risk: Systematic Review and Meta-Analysis. Nutr Cancer. 2014;66(4):539-549. ・Wu S et al. Fish consumption and the risk of gastric cancer: systematic review and meta-analysis. BMC Cancer. 2011;11:26. ・Szymanski KM et al. Fish consumption and prostate cancer risk: a review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2010;92(5): 1223-1233. ・Wang X et al. Fruit and vegetable consumption and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. BMJ. 2014;349:g4490. ・Li M et al. Fruit and vegetable intake and risk of type 2 diabetes mellitus: meta-analysis of prospective cohort studies. BMJ Open. 2014;4(11):e005497. ・Zong G et al. Whole Grain Intake and Mortality From All Causes, Cardiovascular Disease, and Cancer: A Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. Circulation. 2016;133(24):2370-2380. ・Mellen PB et al. Whole grain intake and cardiovascular disease: a meta-analysis. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2008;18(4):283-290. ・de Munter JSL et al. Whole Grain, Bran, and Germ Intake and Risk of Type 2 Diabetes: A Prospective Cohort Study and Systematic Review. PLoS Med. 2007;4(8):e261.
---------- 津川友介(つがわ ゆうすけ) 東北大学医学部を卒業後、ハーバード大学で修士号、博士号を取得。聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。著書に10万部超のベストセラー『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』、『世界一わかりやすい「医療政策」の教科書』、共著に『「原因と結果」の経済学』などがある。 ----------
津川友介