CS崖っぷち…なぜ阪神のエンドランサインが巨人ベンチに読まれたのか…1球のピッチドアウトが生んだ抑止力
「三塁コーチのサインよりベンチから出すサインが簡単になっている。今季の阪神は、矢野監督と井上ヘッドが同時にサインを出して読まれるのを防ごうとしているが、映像で確認すると、あの場面で矢野監督のブロックサインは体の3か所を触るくらいの短くて素早いものだった。矢野監督のサインが先に終わっているのに井上ヘッドはまだサインを続けていた。おそらく井上ヘッドがダミーなのだろう。ベンチのブロックサインがポンポンと短く素早い場合は“何かある“と睨むのがセオリー。出す側の心理として“読まれまい”と、速く出そうとするからだ。もうひとつの可能性は一塁コーチのサイン。外国人は日本流の複雑なブロックサインを見落とすケースが多いので、近くにいる一塁コーチが何かしらのフラッシュサインで教えるケースが少なくない。指やウインク、言葉などで簡単に教えるのだが、逆に言えば相手にもバレやすい。巨人は、阪神のそういうサインの傾向をシーズン中から見破っていて、ここ一番で使おうと温存して準備していたのだろう。つまり阪神がCS用の特別のサインを用意していなかったのだ」 実は、阪神は昔からベンチからのサインを読まれないようにする危機感が薄いという。高代氏は2014年に和田豊監督の時代に阪神にコーチとして入団。三塁コーチを務めてブロックサインを出したが、監督の指示を聞きベンチから某コーチが出していたサインがワンパターンで体の3か所くらいしか触らなかったため「もっと動いてもらいたい」と要請したことがある。 それでも緊迫する場面では、ついクセが出るため最終的にベンチ内からサインを出す人物を交替したという。球団によれば用心してベンチに座る控え選手に三塁コーチへのサインを出させるチームなどもあるが、CSで指揮を執った経験のない阪神首脳の予期せぬ“死角”を突かれたのである。 結局、糸原は四球を選んだが、得点圏には進まず後続が続かなかった。 この5回の攻防は対照的だった。表の攻撃で、巨人は、脇腹を痛めベンチ外となった岡本に代わり4番に座った先頭の丸がヘッスラを敢行するセカンドへの内野安打で出塁すると原監督は、手堅く5番のウィーラーにバントで送らせた。来日7年目にして初のバントを成功させると、中島がライト前ヒットでつなぎ、吉川が追い込まれながらもカットボールに食らいつきセンタ―前へ先制タイムリーを放った。 高代氏は5回の攻防に両軍ベンチの経験の差が如実に現れたと見る。