第161回芥川賞受賞会見(全文)今村夏子さん「楽しいから書き続けられた」
いろんな読み方が可能な点が評価されたが、どう思うか
共同通信:はい。共同通信社の【スズキ 00:02:04】といいます。本日はどうも、おめでとうございました。 今村:ありがとうございます。 共同通信:選考委員の小川洋子さんが、今回の作品について、選考委員によっていろんな読み方ができたということをおっしゃっていて、「むらさきのスカートの女」と、「わたし」、「黄色いカーディガンの女」が2人とも実在するのか、あるいは同一人物なのか、あるいは妄想ではないのかという、いろんな読み方を選考委員はされていて議論になって、それがさらに評価を高めた原因になったということをおっしゃってたんですけれども、そうした評価について、作品が読まれてるということについて、どのようにお感じになりますでしょうか。 今村:大変ありがたいです。いろんな読み方をしてもらったほうが、はい、私もうれしいです。 共同通信:ご本人としては、そういうふうな多様な読み方をしてもらえるというのを狙ったようなところっていうのはあったんでしょうか。 今村:最初は、同一人物と想定して書いたことはなかった、書き始めたわけではなかったんですけど、完成したものを読み返したときに、いろんな読み方ができて面白いねっていう話を担当さんともしました。はい。ですから、そういう読み方をしていただいたことは良かったなと思っています。 共同通信:ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。引き続きまして、では真ん中の【マチダ 00:03:40】さん。すいません、今マイクがまいります。
9年間書き続けられた理由は?
読売新聞:読売新聞のマチダです。受賞おめでとうございます。 今村:ありがとうございます。 読売新聞:『こちらあみ子』が話題になってから9年だと思うんですけども、この9年間、途中、書くのが嫌になったときもあったって伺ったんですけど、書き続けられた理由と、この9年間で一番、自分の中で変わったことがあったら、何か、教えてください。 今村:書き続けられた理由は、やっぱり書くのはすごくつらいですし、嫌だと思うときのほうが多いんですけど、やっぱり楽しい。はい。楽しいからだと思います。 あと9年間、一番変わったことは、開き直ることができたというか、失敗してもいいやと思えるようになりました。 読売新聞:それは書く上でっていうことですか。 今村:そうです。 司会:ありがとうございます。引き続きまして、じゃあ、そちらの白いシャツの方に。