AirPodsが衰えた聴覚を支援 無料「ヒアリング補助」機能のインパクト
無料ソフトウェアアップデートにより提供される聴覚検査機能
聴覚の健康をサポートする機能は、イヤホンに付属する純正シリコンイヤーチップによるフィッティング調整ができることと、Apple H2チップによる高度な演算処理能力を必要とする。ゆえに2024年10月時点ではAirPods Pro 2以外のAirPodsシリーズは対応していない点に注意したい。 アップルは新しい機能が対象とするユーザーを「軽度から中等度の聴覚障害が認知されている18歳以上の患者」としている。難聴の可能性がない方も試すことはできるが、音が聞こえすぎるような不自然な感覚があると思う。 ■無料ソフトウェアアップデートにより提供される聴覚検査機能 今回は特別な取材の機会を得て、AirPods Proに新しく実装されるヒアリングチェックとヒアリング補助をリリース前に実機で試すことができた。 iPhoneにAirPods Proをペアリングして「設定」アプリを開くと、AirPods Proの設定画面の中に新しく「聴覚・聴力」のメニューが追加されている。 「聴力補助」をタップするとヒアリングチェックによる聴力検査のデータ(オージオグラム)を追加するように求められる。聴力補助を初めて利用する場合、「Appleのヒアリングチェックを受ける」メニューを選択して先に進む。 ヒアリングチェックは約5分間。AirPods Proを耳に装着した後、テストトーンが聞こえたらiPhoneの画面をタップする作業を繰り返す。チェックの内容は、耳鼻科や健康診断で受診できる聴力検査をイメージしてほしい。とても小音量のテストトーンを聞き分ける必要があるので、検査は静かな場所で行いたい。
自然な聞こえを支援するヒアリング補助
ヒアリングチェックの結果(オージオグラム)は、iPhoneのヘルスケアアプリにデータが数値とグラフで記録される。左右の耳ごとに難聴の度合いも判定される。Apple Watchが搭載する心電図アプリの解析データのように、ヒアリングチェックの結果もPDFファイルに書き出せる。医師との相談にも役立てられるだろう。 米国に暮らす筆者の知人に聞いたところ、同国には日本のような国民皆保険制度がないため、医師を訪ねて聴覚検査をするとそれなりの負担になるという。だからこそiPhoneとAirPods Proを使って、自身の耳の聞こえにくさや難聴の傾向をセルフチェックできることが「画期的」なのだと、知人は期待を寄せていた。 ■自然な聞こえを支援するヒアリング補助 ヒアリングチェックを済ませると、AirPods Proのメニューから「ヒアリング補助」の設定がオンに切り替えられる。ヒアリング補助はAirPods Proのノイズキャンセリング機能と併用ができないので、外部音取り込みの機能を同時にオンにして使う。 ヒアリング補助には音の聞こえ方をより好みに合わせて最適化できるよう、主に「増幅」「バランス」「トーン(声の高さ=ピッチ)」という3種類の詳細な調整メニューがある。 音量を増幅するだけならば、日本国内ではオーディオ機器に分類される「集音器」の中にも同じ使い方ができる商品がある。AirPods Proには目の前で話している人の声だけを拾って、対面での「会話を強調」する機能や、リスニングの快適さを高めるためのトーン設定などより細かな機能が揃っている。声にフォーカスを定めつつ、同時に環境雑音を除去して聞きやすくすることもできた。 今回はiPhoneとAirPods Proの組み合わせで新機能を試したが、設定の微調整はiPadにMac、Apple Watchからも行えるようだ。