京アニ裁判 精神鑑定なぜ判断分かれる?「死刑制度が結果歪める」精神科医の問題提起 #ニュースその後
重大な犯罪で極刑を求めるのは検察だけではない。遺族も処罰感情から極刑を求め、国民世論もそれを支持する。そんな中では、精神鑑定自体もそうした社会の声に押されてしまう面は否定できないと岩波氏は言う。 「つまり、この死刑制度という存在が『医学的な観点=精神鑑定』を歪めていると言えます。日本での起訴前の精神鑑定は『心神喪失である』という可能性を消すためのプロセスになってしまっている。そうでないと公判を行い、極刑を求めることができないからです」 その上で岩波氏はこう問題提起する。 「大事な家族を奪われた遺族が処罰感情を抱くのは当然のことです。ただ、『死刑』がなくなり、刑務所での無期懲役か病院での長期の入院かという判断になったら、どうでしょう。触法精神障害者(罪を犯した精神障害者)への対応について、検察も社会も考え方が変わるのではないでしょうか。統合失調症という精神障害がもたらした犯罪をどう捉えるべきか。また、医学で見る精神鑑定をどう司法で扱うかは、改めて考えていく必要があると思います」
--------- 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している