フリーランス新法、無理解は重大リスク 「下請けいじめ」回避する3つの方法
11月、フリーランスと発注事業者の取引適正化や就業環境の整備などを定めた「フリーランス新法」が施行された。フリーランスとの取引を巡っては、KADOKAWAなど大手企業が下請法違反で相次いで勧告を受けている。取引適正化の枠組みが整備されたことで、中小企業も対応が求められる。労働法制に詳しい堀田陽平弁護士に聞いた。 【関連画像】24年はフリーランスと大手の取引を巡るニュースが相次いだ(写真=soraneko/stock.adobe.com) 新法の施行に合わせるかのように、フリーランスに対する買いたたきや不当な業務に対して公正取引委員会が勧告を出すニュースが相次いだ。 10月、VTuber(バーチャルユーチューバー)関連の取引を巡り、個人事業主らに無償で仕事のやり直しをさせたことが下請法違反に当たるとして、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバーが公取委から再発防止などを求める勧告を受けた。 公取委によると、同社は2022年4月~23年12月までに、VTuberが演じるキャラクターの動画用モデル作成などを巡って、23の下請け事業者に対してやり直しの作業を243回、無償で行わせていた。下請け事業者のうち、約8割は個人事業主だったという。 また、今年11月には出版大手のKADOKAWAと同社子会社が、ライターの原稿料や撮影料を不当に引き下げたことが下請法違反に当たるとして、公取委から再発防止などを求める勧告を受けた。同社は23年1月に月刊生活情報誌の制作に関わるライターやカメラマンの原稿料や撮影料を同年4月発売号掲載分から一方的に引き下げると通知。事前協議はなく、原稿料は最大で約39%引き下げられた。対象となった26社の下請け事業者のうち、21社はフリーランスなどの個人事業主だったという。 フリーランスなどの小規模事業者は買いたたきの被害に遭いやすい。公取委と厚生労働省が新法施行前の24年5~6月に行ったアンケートでは、7割弱のフリーランスが、十分な協議がなされないまま報酬額が決められるなど、買いたたきに遭った経験があると回答している。 ●発注者が中小でも対象に 上記の例はいずれも下請法に違反したというもので、資本金1000万円以下の企業が発注者であるケースは対象外だった。しかし、今回施行されたフリーランス新法における発注側(委託者)の定義は「フリーランスに業務を委託する事業者」であって、下請法のように資本金の定めなどはない。すなわち、たとえ中小規模の事業者が発注する場合でも、フリーランス新法を順守する義務がある。フリーランス新法は細かな点に差異はあるものの、おおまかには下請法の適用対象が拡大したものだと考えると分かりやすいだろう。(関連記事 「フリーランス新法を分かりやすく 11月1日施行、知っておきたい10の疑問 」) 発注を受けるフリーランスの業種についても特に規定しておらず、「個人受託の運送業」「建設業の一人親方」「システムエンジニア」など多岐にわたる点も注意したい。こうしたフリーランスは建設、IT(情報技術)、物流などの業界を支える存在となっている。漫然と従来の慣行で取引を続ければ、発注者にリスクが生じるかもしれない。オンライン上で企業と働き手を仲介する「クラウドソーシング」経由で業務を受注している人も、新法ではフリーランスと見なされる。