名古屋が誇る「日本一の敬老パス」 JR・私鉄OKの「太っ腹」が成り立つ裏事情とは?
バスは市外でも利用可能路線あり!
バスも同様に注意が必要で、路線によっては一停留所を過ぎて市外になると、料金が大きく跳ね上がることがある。 ただ、こちらにも例外はあり、名古屋市南東部の地下鉄「徳重」駅から隣接する豊明市の「藤田大学病院」までの名鉄バス路線は、市外乗降でも無料となる。多くの市民が病院に通うための便宜なのだという。 このように例外があることもあって、初めて使う場合は有料なのか無料なのかよく分からない。いったんはチャージ金額から引き落とされるのだからなおさらだ。「敬老パスがより便利になりました」という市の宣伝につられてたくさん使っていたら、すべて有料だったというトラブルも起こりかねない。
「730回」の利用回数制限を導入したのはなぜ?
実は今回、もう一つ新たに導入された条件がある。有効期間内(原則1年間)に利用できる回数が「730回」に制限されたのだ。1年間毎日2回利用した回数を超えた場合、カードは2週間後に自動的に使えなくなる。なぜ、このような制限を設けたのだろうか。 市高齢福祉課によると、これまでの利用者の約半数は年間100回以下の利用だったが、中には数百回どころから数千回利用する「猛者」もいたという。実際にそれだけ元気に動き回る高齢者がいれば、名古屋市はそれこそ高齢者が公共交通機関を使いながら街中を歩き回る健康的な街ということになるのだが、私が見る限りそんなことはどうもなさそうだ。 そこで考えられるのが「不正利用」の可能性だ。
実は私も、間接的にだが「一人の敬老パスを社内の何人かで使い回している」といった会社の話を聞いたことがある。改札を通る際に黄色いランプが点くので敬老パスの利用であることは分かるが、利用者を見かけだけで65歳以上と判断することはなかなか難しい。そこを逆手にとった利用者が少なからずいるということのようなのだ。 敬老パス制度に使われた事業費は、2018年度で約140億円。そして、今回、利用範囲が広がることで増える事務手数料などの必要経費は約10億円の見込みだという。単純に足し算すれば年間150億円ほどの事業費を要することになるが、利用範囲の拡大でJRや私鉄を乗る時に敬老パスを利用する人が増えれば、それによる増加分はバカにならないだろう。さらに多くの事業費が必要になりそうにも思える。 それでも、市は「731回以上利用しているのは約6%だけ」というデータを基に、730回という利用回数制限を導入すれば、対象範囲を広げても事業費は増えないと見込んでいるようだ。大量に使う人が減れば十分にまかなえるという計算のようで、それだけ、不自然な使い方をしているケースがあるということだろうか。