女性に多い「バセドウ病」と「橋本病」の違いとは? 同じ甲状腺疾患でも症状や治療は変わる?
バセドウ病や橋本病は、女性に多く見られる甲状腺疾患です。どちらも甲状腺に異常が起きることで発症する疾患ですが、一体どのような違いがあるのでしょうか? 症状や治療法などの違いについて、永島メディカルクリニックの永島先生に詳しく教えてもらいました。 【イラスト解説】「バセドウ病」「橋本病」のセルフチェック方法
バセドウ病とはなに? 自己免疫疾患とは?
編集部: バセドウ病とはなんですか? 永島先生: 簡単にいうと、甲状腺ホルモンが過剰に作られることで、体にさまざまな症状が出現する疾患のことをいいます。自己免疫疾患の一種とされています。 編集部: 自己免疫疾患とはなんですか? 永島先生: 人間に生来備わっている免疫系が、正常に機能しなくなることで発症する疾患のことをいいます。 人間には細菌やウイルスなどの病原体を排除するための仕組みが備わっており、それが免疫系と言われています。この免疫系が暴走し、自分の正常な組織や細胞に対して過剰に反応して、攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。 編集部: なぜバセドウ病は自己免疫疾患の一種なのですか? 永島先生: 甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が甲状腺のTSH受容体を刺激することで分泌されます。いってみれば、TSHが受容体という“鍵穴”に結合することで、甲状腺ホルモンが分泌されるのです。 しかし何らかの原因により、TSH受容体に対する抗体が体内で作られ(これを自己抗体といいます)、これがTSH受容体を刺激し続けることがあります。 その結果、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌されてしまうのです。バセドウ病はこうした自己抗体が関係する病気のため自己免疫疾患の一種とされています。
橋本病とバセドウ病の違いとは?
編集部: バセドウ病と似た疾患に橋本病もありますが、これらはどう違うのですか? 永島先生: バセドウ病は甲状腺ホルモンを過剰に分泌する疾患ですが、反対に橋本病では甲状腺ホルモンの分泌量が低下してしまいます。 なぜなら橋本病の場合、甲状腺に炎症を起こす抗体が体内で作られて、慢性的な甲状腺の炎症が引き起こされるためです。それにより、甲状腺ホルモンの分泌量が減少してしまうのです。 編集部: 橋本病も自己免疫疾患の一種なのですか? 永島先生: はい。バセドウ病と同じく甲状腺を異物とみなすことで発症します。 ただし、標的とするものが両者で異なり、バセドウ病の場合には甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受容体が攻撃されることで発症しますが、橋本病の場合には甲状腺の細胞内にあるたんぱく質が標的となります。 編集部: それぞれ、どのような原因で起きるのですか? 永島先生: どちらも原因は解明されていませんが、バセドウ病や橋本病になりやすい体質を持っている人が何らかのウイルスに感染したり、強いストレスを抱えたり、また、妊娠・出産したりしたことがきっかけとなって発症するのではないかと考えられています。 編集部: バセドウ病や橋本病は遺伝性ですか? 永島先生: バセドウ病や橋本病になりやすい体質は遺伝します。研究により、親、兄弟、祖父母がバセドウ病の方は、一般の人に比べて20~40倍くらいバセドウ病になりやすいことがわかっています。 しかし、それだけでは発症に至らず、ウイルス感染やストレスなどの要因が重なって発症すると考えられています。 編集部: どちらも女性に多いと聞きました。なぜですか? 永島先生: はい。バセドウ病は20~30代の若い女性に多く、男女比は1:3~5くらいといわれています。一方、橋本病は30~40代の女性に発症することが多く、男女比は1:20~30くらいとされています。 なぜ女性に多いのかについては現在も研究が進められていますが、明確にはなっていません。もともと自己免疫疾患は女性に多く発症する疾患です。この原因として、エストロゲンなど女性ホルモンの影響が考えられています。