女性に多い「バセドウ病」と「橋本病」を解説 同じ甲状腺疾患でも症状や治療は変わる?
症状と治療法
編集部: バセドウ病や橋本病ではどのような症状が見られるのですか? 永島先生: まずバセドウ病では、動悸、体重減少、手足の震え、暑がり、汗かきなどの症状が起こります。そのほか、疲れやすい、軟便・下痢、筋力低下、イライラ、落ち着きがないといったことが起きることもあります。また、眼球の突出が見られることもあります。 一般に更年期障害と似た症状が出現するので、混同されがちという特徴があります。しかし、それぞれ治療法が異なるため、このような症状を自覚した場合は早めに検査をする必要があります。長く我慢していると心臓に負担がかかり、心不全に至ることもあります。 編集部: 橋本病ではどのような症状が見られるのですか? 永島先生: 甲状腺が腫れ、首周辺に圧迫感や違和感を覚えることがあります。橋本病は甲状腺に慢性の炎症が生じる疾患で、甲状腺機能低下症の代表的な疾患ですが、橋本病患者の全員に甲状腺の機能低下が見られるわけではありません。 橋本病と診断されても、甲状腺の機能は正常な人はたくさんいます。しかし甲状腺機能低下症を発症すると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声、脂質異常症などが見られることがあります。 また、うつ病や認知症と間違われることもあります。 編集部: それぞれどのようにして治療するのですか? 永島先生: バセドウ病の場合には、主な治療法として薬物治療、アイソトープ治療(放射線治療の一種)、甲状腺を切除する手術の3つがあります。 薬物治療で改善が難しい場合や、副作用がある場合などには、放射性ヨウ素を内服することで甲状腺を被曝させて甲状腺を小さくするアイソトープ治療や、甲状腺を切除する外科手術を行うことがあります。 編集部: 橋本病の場合には? 永島先生: 先述のように、橋本病を発症しても多くの患者さんは甲状腺の値は正常です。そのため、まずは採血して甲状腺ホルモンが低下していないかを経過観察します。 もし甲状腺の機能が低下して甲状腺ホルモンの分泌量が減少している場合は、甲状腺ホルモン剤を少しずつ開始して、ホルモンの量が正常近くになるまで増量します。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 永島先生: バセドウ病や橋本病といった甲状腺疾患は、一般の健康診断や採血では見つかりにくい病気です。そのため、早期発見のためには自覚症状にいち早く気づくことが大切。 イライラする、ドキドキする、手が震えるなどの症状ではバセドウ病、だるさ、むくみ、寒がりといった症状のときには橋本病を疑い、医療機関で甲状腺ホルモンの検査を依頼してみてはいかがでしょうか? その際には内科または内分泌科を受診することをおすすめします。