「お嬢さんが北朝鮮で生きている」横田めぐみさん宅にかかってきた“拉致問題”を動かす政治家秘書からの“一本の電話”
「13歳」「バドミントンの練習の帰り」めぐみさんとの符合
主人はこの記事を読んだ瞬間に、これは確実に、めぐみのことだろうと思ったそうです。「13歳」とか「クラブ活動のバドミントンの練習の帰り」というのは、めぐみにピッタリです。「少女は双子の妹」ではなく「少女には双子の弟がいる」が本当ですが、私たちに双子の子どもがいるというのは事実で、それを知っている人は限られています。 あとで石高さんから伺ったのですが、「日本から拉致された13歳の少女」の件は、取り調べた工作員から情報を得た複数の国家安全企画部の幹部の方から聞いたとのことでした。ですから、話が伝わる中で、「双子の弟がいる」が「私は双子の妹」に変わったのかもしれません。 主人は直感的にめぐみだと思う反面、しかしこれだけなら、めぐみの失踪当時の新聞記事から、ある程度の話をつくれるだろう、とも思ったそうです。実際、事件後まもなく私のところに脅迫電話をかけてきた高校生は、新聞やテレビの公開捜査を参考にして誘拐犯を装い、そして私は高校生の言うことを信じたのですから。 これが、もしも、親しか知らないようなこと、たとえば家族旅行に行った土地や、その日付などの情報があれば、めぐみに間違いないと言えるのですが、そこまでは断定できず、不思議なことがあるものだと思って、主人は帰ってきたのでした。 私は主人の話を聞くと、胸がどきどきし、背中がぞくぞくしてきました。「うわぁー、生きていたのねえー。よかったわねえ」と、最初は喜んだのですが、だんだんと興奮が冷めてくると、不思議なことだらけでした。20年も経ってから、そんなことが分かるなんてことがあるのかしら。なぜ、めぐみは北朝鮮に連れて行かれなくてはならなかったのだろう。半信半疑のまま、私の頭の中は混乱してきました。 主人も私も、それまでさまざまな可能性に期待をかけながら、そのつど失望してきましたから、石高さんの話もそれっきりで終わるのか、それともどういうふうに展開してゆくのだろうかと思っていました。けれども、今回は、石高さんの一文がきっかけとなって事態は大きく動きだし、ついには、めぐみが北朝鮮にいることを決定的に証言する人が現れたのでした。
横田早紀江