「食育」の第一歩は「食事を楽しむ」こと!進んで食べる子になる会話術
なぜ、「食事を楽しむ」ことが重要なのか
山口さん:食事の時間が楽しいと、食事に対して前向きで能動的になれます。食事の目的は、生きていくための栄養摂取だけでなく、心の栄養補給という意味合いも大きいもの。 楽しい食事を通じ心身ともに元気になる。そんな経験を積み重ねていると、食への興味もわき、おのずと食の幅が広がっていきます。「今度、みんなでこれを食べてみたいな」と食材やメニューへの関心が高まるのはもちろん、食品ロスの問題やSDGsへの意識も喚起されやすくなるでしょう。 一方で、食事の時間が窮屈(きゅうくつ)で緊張感のある場だったらどうでしょうか。実際、以前私がしゃぶしゃぶのお店で外食をしていた時のことです。隣のテーブルで、おじいちゃんに細かな食事マナーばかりを厳しく注意されている子を見たことがありますが、見ているだけでもつらいものがありました。その子にとっては、食事は恐怖感に結びつき、積極的に席についたり、何かを知ろうとしたりする意欲は生まれないでしょう。 食育も勉強やスポーツと同じで、「楽しい」が出発点になれば、こちらからの働きかけが少なくても広がりを見せていくものです。ご家庭では、まずは家族で食事を楽しくすることから始めていただきたいですね。
「食事を楽しむ」ために家庭でできることは?
山口さん:「楽しい」の土台には、安心・安全があります。どんなにおいしい食事でも、時間に追い立てられたり、危険な場所で食べたり、恐怖心を覚える人と一緒であったりしては楽しめないですよね。そのため、まずは苦痛があれば取り除いてあげることが大切です。次の「3つの間」を意識して、安全な環境・関係性をつくってください。 ・時間 「◯分以内に食べ終わる」など時間の制約を厳しくしたり、「食べられるまで居残り」といったルールを設けて焦らせたりしない。 ・空間 がやがやしている、狭い、不衛生など、食事に集中しにくい場所にしない。 ・仲間 一緒に食卓を囲む相手は、安心して心を許せる人にする。威圧的だったり、叱ったりする人とは同席しない。 また、毎日のように「これ食べてみたら?」と新しいメニューや食材に挑戦させている場合は要注意。お子さまにとって、ときに新しいメニューを試してみるのは好奇心を刺激されるものですが、あまりに頻繁(ひんぱん)だと大変なもの。しょっちゅう挑戦が求められる食事って大人でもつらいですよね。いつものメニューを楽しく食べて、たまに新しいものも食べる。そのくらいで十分なんです。