診断まで36年―高熱と痛みを繰り返す希少疾患「家族性地中海熱」 患者が抱える課題は
家族性地中海熱は、発作的に起こる発熱や腹痛、胸痛、関節痛などの症状が繰り返される自己炎症性疾患(自然免疫系の異常により炎症が起こる病気)の1つです。発作を引き起こす主な原因として、ストレスや疲労、月経などが挙げられます。発作予防のためには無理のない生活を送ることが大切ですが、周囲からの理解が得られずにつらい思いをしている患者さんは多くいらっしゃいます。また、発作後はたちまち元気になったように見えるため、周囲から病気であることを信じてもらえないという方もいます。家族性地中海熱の当事者であり、自己炎症疾患友の会(以下「患者会」)代表を務める足立理緒さんは、「家族性地中海熱という病気を正しく知り、本人の言葉を信じてほしい」と語ります。足立さんに家族性地中海熱の患者さんを取り巻く現状と思いについて伺います。
◇生後6カ月で始まった発熱―診断遅れで臓器障害も
発熱が始まったのは生後6カ月の頃でした。2~3日間続く高熱を毎月繰り返し、関東のあらゆる病院を受診しましたが、「赤ちゃんは熱を出しやすいからね」と言われて終わっていました。看護師だった母親は、もし感染症なら自分にもうつるはずだと何カ所もの病院で訴えましたが、「親が神経質になるからストレスを感じて発熱しているのだ」と言われたこともあると聞いています。父と祖父にも同じような症状があったので、やはり体質なのかなと思い5歳を機に受診をやめたそうです。その後も毎月のように発熱を繰り返し、19歳の時に発熱と同時に腹痛や胸痛、関節痛が出現。熱もなかなか下がらなかったため病院を受診し1カ月ほど入院しましたが、結局原因は分かりませんでした。 32歳で結婚して岐阜県に引っ越した頃、発熱と猛烈な胸の痛みに襲われ、病院を受診し、名古屋大学医学部附属病院を紹介されました。そこで、不明熱として総合診療科に数年間通院していた時、ふと主治医から「もしかして家族に外国人の方がいる?」と聞かれました。家族性地中海熱は地中海沿岸に多くみられる遺伝性の病気です。そこで祖父がイギリス人であること、祖父とその子どもにあたる父も同じ症状を持っていたことを伝え、初めて家族性地中海熱が疑われました。家族性地中海熱の治療薬であるコルヒチンを試してみたところ薬が著効し、36歳で家族性地中海熱の診断に至りました。 診断の遅れにより全身の炎症が長年繰り返されてしまったことで、現在は臓器障害を併発しています。発熱や腹痛がある期間は食事ができないので、解熱後に取り戻すように食べるということを30年以上繰り返していたために脂肪肝となり、肝硬変をきたしてしまいました。また、胸膜炎から心膜炎に至り、心不全も発症しています。