空を映す湖面!白波が立つ太平洋!その間をまっすぐに走る絶景ドライブ
松川浦(福島県相馬市)
はじめに、潟湖(せきこ)とは川の河口部の入り江が砂州(さす)によりせき止められ、外海から隔てられてできた湖のことで、サロマ湖や浜名湖などを代表例に穏やかで景観に優れた所が多い。福島県唯一の潟湖である松川浦もまた長い歴史を持つ景勝地だ。南北の長さ約7キロ、東西の最大幅1.5キロの汽水湖は古くは万葉集に詠われ、江戸時代には当地を治めた相馬中村藩主の行楽地となり、第5代藩主相馬昌胤(まさたね)は新名所「松川十二景」の公認を東山天皇に願い出たと伝わる。 その絶景を見ようと、福島県の沿岸部、宮城県境に接する相馬市を目指した。仙台から車で約1時間の常磐道相馬ICを降り、しばらく東へ走ると、この日の曇り空を映す湖面が現れた。カタカナの「フ」の字形をした湖の北岸は旅館や民宿、食事処が点在し、相馬復興市民市場「浜の駅 松川浦」、伝承鎮魂祈念館など立ち寄りたい施設もある。 この地のシンボルの一つである松川浦大橋を渡り、鵜ノ尾埼灯台が立つ岬のトンネルを抜けると、目の前のパノラマに思わず歓声を上げた。右に松川浦の静かな湖面、左に白波が立つ海岸と水平線が広がり、その真ん中をまっすぐに進む爽快なドライブルートだ。道は湖を形作った細長い砂州の上にある。目前の海岸線は微かに曲線を描きながら南相馬、その先のいわきの方へ続いている。
外海の影響を受けない松川浦は、無風の時はほとんど波がなく、湖面に空の色を映して美しい。晴天なら青く、曇天なら灰色に、朝焼けや夕焼けの色も同様だ。小島が点在する風景を日本三景になぞらえ「小松島」とも呼ばれる。冬は2018年に出荷を再開したアオサ(ヒトエグサ)が収穫期を迎え、点々と浮かぶノリ棚と杭に、ちぎれ雲がかかる背後の低い山並みが相まって、日本画のような風情があった。灯台下の展望台や、桟橋からも間近に眺められる。 車を走らせていると、道の両側に若い松が植林されているのに気付く。「日本の白砂青松100選」に選定された地の松が小さいのは、東日本大震災の津波で流されたからだ。昔の写真を見ると、11年を境に松川浦の風景の一部は変わっている。初夏の風物詩だった潮干狩りはその前年以来、行われていない。