大抜擢の先発でたった3球で危険球退場…カープの3年目ドラ1黒原拓未が失意のどん底から復活できた理由
危険球退場のショックを乗り越えて
あの試合から中7日となる4月7日の中日戦で先発登板の機会を与えられた。ローテーションでは9日の甲子園での阪神戦だったが、前回の登板で敵地からブーイングを浴びていただけに、本拠地のマウンドに送り出すという首脳陣の配慮もあった。 1回を三者凡退で滑り出し、4回までわずか1安打。二塁を踏ませない投球を見せた。140キロ台後半の直球には切れがあり、カットボールやチェンジアップなどの変化球も冴えた。5回に1アウトから連打で1点を失い降板となったが、それまでやってきたすべてをマウンドで出せた。 「キャンプから自分の球にすごく自信あったので、前の登板では思うように行かず本当に悔しかった。2回目の先発ではある程度、発揮できたかなと思う。あそこがひとつの分岐点だった」 森下の戦列復帰もあり、一軍の先発ローテからは外れることとなった。当初は二軍で次回登板を待って調整するプランだったが、黒原が見せた成長度に一軍にとどめる案が浮上。新井貴浩監督は当時のやりとりを明かす。 「すごくいいものを見せてくれたし、すごくいい球を投げていた。ファームで(先発として)スタンバイしておくのは、すごくもったいないと思ったので、試合後に彼と話をした。『(二軍で)先発待機しておくか、(一軍の)ブルペンに入ってやった方がいいのか。どっちだ? 』と聞いたら、『先発でもブルペンでも何でも、とにかく一軍の力になりたいです』と言ってくれたから、じゃあブルペンに入れようという感じかな」 2度目の先発から中4日をへて、ブルペンの一員となった。ビハインドや大量リードの展開、延長戦など登板状況は問わず、黒原は投げた。イニングまたぎやロングリリーフも担った。中継ぎ転向後、11試合連続無失点。5月25日のDeNA戦では、延長11回に登板し無失点に抑えてプロ初勝利を手にした。場所は危険球退場になったのと同じ横浜スタジアムだった。 「ここまで長く感じました。でもそれは自分の実力というか、自分が蒔いた種子なので。自分の弱さを受け入れて、これからももっと上のレベルに上がれるようにしていきたいと思います」
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