倒産直前企業が示す「死のサイン」 船井電機に見た予兆 危ない「倒産予備軍」の見抜き方(上)
社外からでもわかるリスクポイント
企業を動かすのは「ヒト・モノ・カネ」といわれる。このうち「ヒト」にあたるキーパーソンの動向は「企業の動向をつかむにあたって大きな意味を持つ」(内藤氏)。これが第2の気付きポイントだ。 とりわけ重要になるのは、経営トップ層の異動だ。急に社長やCEO(最高経営責任者)に外部からの人材が送り込まれるような動きには「警戒する必要がある」(内藤氏)。 M&A(合併・買収)も企業を様変わりさせる一因となり得る。同業他社や出資企業が仕掛けたM&Aではなく、異業種や投資会社からのM&Aである場合は、それまでのビジネスモデルが変容するきっかけとなりやすい。 船井電機は2021年、秀和システム(東京・江東)傘下の秀和システムホールディングス(同)による、自社へのTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。秀和システムは実用書やビジネスに関連した書籍の出版に強みを持つが、家電製品との関係性は小さい。 M&Aの成立後、NTTぷらら元社長の板東浩二氏が会長兼社長に就いた。翌2022年には秀和システムの会長兼社長だった上田智一氏がトップの座を引き継いだ。上田氏は2024年9月27日付で社長を退任したと、10月3日時点の船井電機ホームページ上で公表されていた。旧経営陣を含めて、ほぼ1年ごとにトップが入れ替わる目まぐるしい3年間だった。 過去3年間ほどの動きを振り返ってみると、船井電機のケースでは「異業種からのM&A」と「経営トップ層の異動」がダブルで起きていたことがわかる。つまり、注意していれば、予兆はそれなりに感じ取れたはずだ。 ほかにも兆しはあった。2023年3月には持ち株会社制への移行が発表された。主力の薄型テレビ事業が伸び悩むなか、テレビ以外の分野の企業を買収するような、機動的な経営判断がしやすい体制を目指したという意図が当時の新聞記事で報じられていた。脱毛サロン会社の買収を発表したのはこの持ち株会社化を発表した翌月のことだから、計画通りに動いたと映る。矢継ぎ早の動きを「機敏な改革」とプラスに評価することもできる一方で、経営が安定感を欠くと判断することもできそうだ。 「カネ」の面では資金繰り・キャッシュフローがポイントになるが、これも外部からはうかがい知ることが難しい。ただ、「支払いの遅延や給与の不払いなど、資金繰りの苦しさをうかがわせる情報が漏れ聞こえることはある」(内藤氏)。そうした非公開の情報にアクセスするには、「日ごろからビジネスのカウンターパートをはじめ、幅広い関係者と接しておくのが効果的」(内藤氏)だという。