オーガスタ、ベイヒル、リビエラ…「対コース」の道具選び/駐在レップの米ツアー東奔西走Vol.6
プロゴルフツアーの現場で働くメーカーの用具担当者(通称:ツアーレップ)をご存じだろうか? 住友ゴム工業(ダンロップ)の宮野敏一(みやの・としかず)氏は松山英樹や畑岡奈紗、ブルックス・ケプカら契約選手をサポートするべく、2020年より駐在先の米国で試合会場に足を運んでは、クラブの調整をする。米国を奔走するゴルフギアのプロが現地からとっておきの情報をお届けする。 【画像】さあ水切りショット
◇ ◇ ◇ ご存じかと思いますが、PGAツアーは広大な北米大陸を転戦する形で、毎週のように異なったコースで試合が行われます。東と西で気候も大幅に違い、試合の開催場所によって芝質やコースの雰囲気もガラッと変わる。選手は毎週のように変わるコースでいいスコアを出すために、各コースに合う(であろう)クラブを探し、アジャストしていくわけです。今回はそんな「対コース」のクラブ選びの考え方、選手とのやり取りをお話していきたいと思います。
2年ぶりの優勝には「どこか予感めいたものが…」
本題に入る前に、松山プロの2年ぶりの優勝(2月の「ザ・ジェネシス招待」)についてお話ししたいと思います。 今年に入ってからというもの、「ショットもパットも一つひとつの精度がすごく良くなっているな」というのは感じていました。一つひとつがいいから、これがギュッと詰まったらどうなるんだろうなというのは感じていて、そのタイミングが訪れるのが楽しみでもありました。
特にグリーン上のパフォーマンスは見違えるものがありました。昨年のパッティングと比べると、転がっているボールの質が明らかに違いました。ショットは飛んでいるボールなのでその変化が分かりやすいですが、パッティングの転がるボールはどれも同じに見えやすく、一見その進化が分かりづらいもの。でも、毎日近くで見ているからこそ分かることがあり、“ナイスパット”は確実に増えていた気がします。 松山プロは完璧を求める人なので、ショットに関しても満足はしていないでしょうけど、でも昨年よりは確実に良くなっていました。ミスをしてラフに入れてボギーということもありますが、ミスのし方などが今までと違った。黒宮(幹仁)コーチとやっているスイングの取り組みがうまくいっていて、彼から刺激をもらいながらゴルフが変わっている段階なんだろうなと感じます。体の状態も良くなって、トレーニングもできているので練習量も増えている。球数をしっかりと打てていたことも、大きかったと思います。 クラブスピード(ヘッドスピード)もボールスピードもバラつきがなくなり、安定して一定以上のスピードが出せるようになっている気がします。ドライバーのスピード感など最高値がそこまで速くなったかというと、そうじゃないかもしれませんが、一つ言えるのは「下の数値がそんなに出なくなった」ということ。なんとなく2023年の後半ぐらいから変わり始めていたのが、ようやくいま実を結んだ形になりました。