オーガスタ、ベイヒル、リビエラ…「対コース」の道具選び/駐在レップの米ツアー東奔西走Vol.6
予選ラウンドはサウスコースとノースコースを1日ずつ回るので、選手たちは練習ラウンドも2コース回らなければいけません。ですから練習日はどこかバタバタと慌ただしく、落ち着いて練習する時間はない。僕も現場で慌てないようにと、ハワイから帰ってきた1週間の間でしっかりと準備をしておきます。ハワイで松山プロから依頼された宿題をやりながら、自分のアイデアでトリーパインズに向けたクラブや試してもらいたいモノを作っていく。新しいクラブをがっつりと試す意味でも、モンスターコースと対峙(たいじ)するクラブ調整の意味でも、我々レップの“真の開幕戦”はトリーパインズなんです。選手もこの試合でスイッチが入りますが、我々も腕まくりして会場に乗り込みます。 一方では、ここからようやく“本土の芝”との戦いになります。西海岸シリーズはいわゆる「キクユ芝」(主にラフ)と「ポアナ芝」(主にグリーン)への対応が必須。トリーパインズやその後に続く「ザ・ジェネシス招待」のリビエラCCは、ラフに行くとキクユ芝が待ち受けています。ボールが浮いていたとしても、ボールの下の芝が強くて芝が切れないケースがあり、時にはチーピンみたいな球が出ることもある。マックス・ホマやザンダー・シャウフェレといった地元カリフォルニア出身のトップ選手も、ウェッジに関しては西海岸専用の芝の抵抗が少ないバウンスに替えています。 松山プロはというと、西海岸だからといって特にウェッジは替えません。彼はあくまでマスターズを見据えていて、ウェッジは「なるべく難しいところ(オーガスタ)にフィットした状態」で、どのコースも戦います。他のプロより難しい(であろう)ウェッジで、今年も西海岸シリーズでチップインを量産していましたから、彼の技術の高さにはほんと脱帽ですよね。
西海岸の中でも特にリビエラのキクユ芝は“やばい”と評判。ドライバーはフェアウェイキープが必須です。ティショットの精度がどこのコースよりも大切になります。選手の練習ラウンドの様子を見て、その週のミスの傾向をチェックし、「常に準備をしておくこと」も我々レップの仕事のひとつなんです。 グリーンに関しても、目の強いポアナ芝ということで、ファーマーズからジェネシスまではパターを替える選手は多くいます。いつもよりは「ちょっと転がりがいいやつ」を求めて、マレットパターなどやさしいパターに振るケースが多い。普段はピン型しか使わない松山プロも、昨年のリビエラではマレットパターを試していました。 トリーパインズとリビエラの間にある「フェニックスオープン」の会場・TPCスコッツデールは、グリーンがめちゃめちゃ硬いことで有名です。ですから、松山プロがなるべく新鮮なウェッジの溝で臨めるように、例年画策しています。通常であれば開幕戦の「ザ・セントリー」から新しいウェッジを入れるので、ちょうどこの辺りで2本目に替えるいい頃合いでもあります。ただし、前回も話しましたがウェッジの替え時というものも難しい。ですから、いつでも松山プロが“その気になる”ように、新しいウェッジも用意はしておきます。いいウェッジが手元に来たら、それこそこの試合に合わせてなるべくキープしておくんです。