一人静かにひっそりと、誰にも迷惑をかけない「孤独死」の準備とは?
万が一に備えての身辺整理の仕方
さて、リヴィング・ウィルを用意したら、次は万が一に備えて、同じアパートの住人や隣近所、大家さん、友人知人たちに余計な迷惑をかけないよう、身辺整理を進めましょう。自分の死体がゴミ屋敷のように汚く雑然とした部屋に横たわっているのを想像するのは、気分の良いものではありません。後片付けをする人の迷惑も半端じゃありません。死ぬときまでに荷物を減らして、必要最低限のものだけが残された簡素な部屋にしておきましょう。「発つ鳥は跡を濁さず」と言い習わされているではありませんか。 ある程度の年齢(たとえば60歳)を越えたら、食料のように短期間のうちに消費してしまう物だけ買うようにして、家具や衣服やその他もろもろの身の回りの品は買わないで、今あるものを使い尽くす。壊れたり、すり切れたりして使えなくなったら順次捨てていく。そうして物を減らしていくのです。
最新流行の生き方「ミニマリズム」がいい切実な理由
必要最小限の物だけで生活するという生き方が「ミニマリズム」として最近話題になっているようですが、きれいに死ぬための準備が結果として最新流行の生き方になるとは、すばらしいことです。これは末期(まつご)の行動の美学、死に際のダンディズムだけではないのです。もっと切実な理由があります。老いを生きるための準備なのです。 年を取れば身体機能は確実に低下します。若い頃は何でもなかった階段の上り下りが難事になり、あわてると転んでケガをする。ケガで済めばいいけれど、骨折して入院したまま寝たきりにもなりかねません。転ぶのは階段だけとは限りません。床に無造作に置いた物につまずいて転ぶこともあります。さらにこんな悲劇もあります。寝室からトイレまでが遠い広い家に住んでいて、夜中にトイレに行こうとして、若い頃のようにサッサと歩けずもたもたしているうちに失禁する。これは自尊心を非常に傷つけます。 こうしたことを考えると、年を取ったら、必要最少限の物しかない小さな部屋でシンプル・ライフを心がけるべきです。