一人静かにひっそりと、誰にも迷惑をかけない「孤独死」の準備とは?
かかりつけ医を作る重要性
そんなシンプル・ライフの果てに死んだら、役所に死亡届が出されます。その際、死亡診断書か死体検案書を添付しないといけません。そして、死亡診断書や死体検案書を書けるのは、医師(例外的な場合には歯科医師も)だけです。 だから、自分のかかりつけ医を作っておきましょう。孤独死が現実味を帯びるくらいの年頃になれば、年に何回かはちょっとした体の不調は起こるものだし、慢性疾患の1つや2つもあるでしょう。受診した折に自分の健康状態や生活状況をきちんと伝えておく方がいい。そして、大家さんなど、自分の死体の第一発見者となりそうな人に、その医者の連絡先を教えておくこと。そうすれば、死亡診断書あるいは死体検案書を書いてくれるでしょう。そうでないと、警察が呼ばれ、監察医による解剖に回されることもあります。 ともかく、無事に死亡届を提出したら、役所から火葬許可証(または埋葬許可証)が交付され、火葬から葬式という段取りになります。どんな葬式を望むのか、きちんと遺言を残しておきましょう。もちろん、式の費用についても。 葬式を望まないという遺言も可能です。わたしはそうするつもりです。遺骨を残さないよう焼ききって灰だけにするゼロ葬です。遺骨がないから,納骨の手間もなく、お墓も要らない。シンプル・ライフの果ての究極のシンプル・デス。これぞ、孤独死にふさわしい遺骸の始末。 もちろん、わたしの趣味をほかの人に押しつけるつもりはありません。孤独死であっても、生前に多少の交友関係があり、友人、知人たちが葬式をしてあげようと申し出てくれるなら、その時は親切をありがたく受取ればいいでしょう。 (心療内科医・松田ゆたか) 【連載】不幸ではない「孤独死」から、老いと人生を考える