能登への思いを一皿にこめて。アルマーニ / リストランテ、レスピラシオンの共宴
コラボレーションディナーの前日。「アルマーニ/リストランテ」の厨房は、「NOTO 高農園」の野菜をはじめとする石川県の食材で溢れた。 金沢「レスピラシオン」の梅シェフは、「地震直後はモノが倒れたり、一瞬にして100人以上のキャンセルが出たりで、どうしようかと思いました。1月は能登の料理人仲間の安否も状況もわからず、不安で不安で。1ヶ月後に炊き出しに能登へ入ったとき、仲間の顔を見てホッとしました。金沢は平常に戻っていますが、県内の生産者さんの状況を見れば、復興はまだまだ先です。輪島から珠洲にかけての外海は壊滅状態と聞きます。能登半島の最南端の七尾付近から北上すればするほど、状況は悪いです。被災地の人たちは、まだまだ家や寝床が、電気や水が不足しています。彼らの窮状を見ると、自分は何かを発信するべき立場ではないと思ってました。でも、能登の仲間に言われたんです。“一緒になって気持ちが潰れる必要はない、金沢は元気ですよって表明すべきだ”って。被災地のことは世の中からどんどん忘れられていく。能登の人たちは、生活の基盤となるものの窮状に対応するのに精一杯で、発信する余裕などない。自分ができることを頑張ろうと思い、考えて考えて。辿り着いたのは、大勢の人たちに、“やっぱりレストランは楽しい”と思ってもらいたいということでした。今回のディナーでは、能登の里山、里海にはこんなにおいしい食材があると知ってもらえたらいい。そして将来、能登まで足を運んでもらえたら。そんな思いを込めて、今日は料理しました」
「能登は新鮮な魚介類や赤土で育った野菜、畜産物が豊かなうえ、古からの発酵文化にも独特なものがみられます。そんな能登の食文化に惹かれ、食材も以前からよく用いていました。2月末に、NOTO 高農園さんに伺った時、水道も通っておらず大変な状況でした。そんななか高さんはとても前向きに頑張っていらっしゃいました。こちらが元気をもらったほどです」とアマランテは言う。「ささやかではありますが、これからも能登の食材を用いて料理をつくり、生産者さんを少しでもサポートできたらと思っています」 「レストラン」とはもともとフランス語で「restaurer」、“元気を回復させる”という意味の言葉から派生している。料理人の手を通して、能登の生産者と客が繋がり、お互いが元気になることを願って開催されたこのイベントは、レストランの成り立ちの原点を思い出させてくれた。