長生きに筋トレのススメ 週30~60分で死亡や糖尿病、がんのリスクが低下
日常的に筋力トレーニング(筋トレ)をする人は、全くしない人と比べ、死亡リスクが17%低いことが分かった。心血管疾患やがん、糖尿病になるリスクも低かった。これらのデータを踏まえ、厚生労働省は日常の運動に関するガイドを改訂。高齢者らに週2~3日の筋トレを推奨した。ガイド作成に携わった早稲田大学スポーツ科学学術院の沢田亨教授(64)に、高齢でも自宅で簡単に続けられる筋トレを教わった。 【写真で解説】スクワットの正しいやり方 ■椅子から片脚で立ち上がるテスト 「椅子から片脚で立ち上がって、3秒キープすることができますか?」 そう話しながら、沢田さんは右脚一本で、ひょいと椅子から立ち上がった。 それくらいなら記者(54)も…と椅子に腰かけ、左脚を床から離し、右脚だけで「よいしょっ」。ふらつく体。3秒間なんとか片脚で立てた。「できる」と胸を張って言えない。 「この動き、簡単じゃなくて、40代、50代でもできない人がかなりいるんです。これができるようになるのが高齢者の一つの目標」と沢田さん。要介護状態や寝たきりになるのを防ぐために欠かせない、太ももの筋力を計る目安になるという。 ■有酸素運動と組み合わせれば、より効果的 沢田さんらが令和4年、国内外の数万人分のデータを分析。筋トレの効能を調べた。すると週に40分の筋トレをする人は、全くしない人と比べて約17%、死亡リスクが低かった。同様に30分の筋トレでがんにかかるリスクは9%低くなり、1時間の筋トレでは糖尿病で17%、心臓病など心血管疾患で18%、発症のリスクが低かった。 さらに筋トレに加え、ジョギングなど有酸素運動を実施している人は、全くしない人と比べて、死亡リスクが40%低かった。 こうしたデータを踏まえて厚労省は昨年、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」を改訂。高齢者と成人に週2~3日の筋トレを推奨した。あわせて高齢者には、週3日以上の「多要素な運動」(有酸素のほか、バランス性や柔軟性を高める運動など)や、1日6000歩以上の歩行もすすめ、「座りっぱなしの時間が長くならないように」と日常生活の注意点を示した。国が筋トレの推奨を明記したのは初めてだ。 ただ筋トレや多要素な運動の強度や回数の目安は示されなかった。個人差があり、〝やりすぎ〟が逆に疾病や死亡のリスクを高めることもあるためだ。